自然教育園の水収支 : (5)集水域の変化について

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今回の調査では, 原集水域及び実集水域について図化し, 総流出量の実測値をもとに平年及び早越年の水収支について検討した。(1) 自然教育園の原集水域は, 総面積37.4haとされた。この内訳は, 園地19.3ha, 周辺地18.1haである。(2) 現在の実集水域は, 総面積21.5haとされた。これは都市化以前の57%にあたる。(3) また, 平年の水収支(1977年の例)は, 面積降水量285,305tの内, 消失量125,352t(44%)総流出量159,953t(56%)となる。(4) 早越年の水収支(1978年の例)では, 平年値に比較して, 面積降水量23%, 総流出量36%それぞれ減少しも消失量については, 7%とわずかに減少したがほぼ平年並の値が保たれた。(5) 早越年の降水配分率では, 平年に比較して消失率が増加し, 総流出率が減少した。(6) 今後も, さまざまな影響により集水域の縮少が進行した場合, 自然教育園生態系にとっては, 今のところ次のような影響が予想される。すなわち, 総流出量の減少により, 谷筋では流水の減少や水位の低下が起こり, このため湿地の乾燥化や陸地化が進行するなどのことが考えられる。この報告を記すにあたり, 本報告は, 1979年に故人となられた三寺光雄先生(当時, 広島大学総合科学部教授)が調査して遺された資料をもとにまとめたものであることを付記すると同時に, 生前の自然教育園の生態系究明についての献身的御努力に感謝し, 御冥福を祈る。
1985-03-25

自然教育園の水収支 : (5)集水域の変化について

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