都市林におけるシュロとトウジュロの異常繁殖 : IV.シュロ実生個体の NAR,LAR,RGR と相対照度との関係
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概要
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都市林におけるシュロの増加の原因の一つとして実生個体の耐陰性が非常に高いことが前報(萩原, 1980)で予測されたが, BLACKMAN&WILSON(1951a, b)が用いた生長解析法を用いてシュロ実生個体の光補償点(最小受量)NAR, LARRGRと相対照度との関係について以下のことが明かになった。1.シュロ実生個体はRGR, NAR, LARの関係から相対照度で0.1%〜0.3%の間に個体の光補償点(最小受光量)があり, ageによる変化は明かではなかった。2.NARは相対照度と正の関係がみられLARは逆の関係になったが, RGRは50%区が各ageとも最大であり, シュロの陰性植物の性質が明かに示された。3.LARは各照度区ともageとともに減少した(Fig.7.)。NAR, RGRは増大し(Fig.5,Fig.6)Thome(1960,1961)の結果と逆になったが, シュロの実生の生長速度が遅いためにいわゆるlag-timeに相当する期間が極めて長いためと考えられた。4.LAR, NARと照度の対数値との関係は, 直線にならず, 特に高照度, 低照度では曲線関係になった(Fig.9.1〜6)。両者の関係はシグモイド曲線を基本とし, ageにより曲線上を一定方向移動すると解釈することが妥当と考えられた(Fig10,Fig.11)。一方RGRはageとともにきめがゆるくなり, 照度に対する差がみられなくなる傾向を示した(Fig12)。5.LARの照度に対する増大は, 他の植物に見られるようにSLAの増大も認められたが, LWRの増加がシュロの耐陰性を高める主な原因と考えられた(Fig13)。6.土壌水分別に見た各部の乾重比では, 乾燥区が常に根の占める割合が高く, 逆に葉の占める割合が少ない。また照度別に見ると同様の結果となり, 高照度・乾燥, 低照度・湿潤という両者複合された環境変化に広い可塑性を持つことが明かになった。さらに茎幹の占める割合は3%〜5%と小さく, 逆に葉柄は30%〜40%と極めて高い割合を示し, シュロの実生の一つの特質と考えられた。
- 1980-12-25
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