胸部 X 線無所見肺癌例に対する気管支全支擦過法の検討

概要

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喀痰細胞診で陽性および疑陽性とされた105例を対象に左右肺の全気管支を区域支ごとに選択的に擦過する気管支全支擦過法を行った。その結果16例18病変の境界病変と51例58病変の肺癌を診断した。病変の局在部位同定率はClass III症例48.5%, Class IV症例82.4%, Class V症例100%で, 全体では62.9%の症例で部位同定が可能であった。本検査法の導入前後で診断成績を比較するとClass III症例での部位同定率は14.7%から47.1%へと向上し(p<0.01), 境界病変も診断可能となってきた。また, 初回検査での部位同定率は64.1%から93.9%へと向上し(p<0.01)特に気管支鏡無所見例での初回検査での部位同定率は0%から88.9%へと向上した。多発癌の診断について比較すると, 本法の導入前は12.1%に術後第II癌が確認されたが, 本法導入後は15.2%に治療前に同時性多発癌が診断された。以上より, 気管支全支擦過法は診断困難例の診断, 境界病変の検索, 同時性多発癌の診断に有用な検査法と考えられた。また, 本法により微細な上皮内病変の検出も可能となり, 呼吸器における細胞診の診断基準の精度向上も今後期待される。
日本呼吸器内視鏡学会の論文
1989-06-10