現代イギリスの教員養成における動向と特質 : 学校基盤/パートナーシップ/校長のリーダーシップ/教職の専門性
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概要
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本論は現代イギリスの教員養成制度に存在する改革モチーフが「政府による中央集権化」であると了解しつつも,単にそれだけではイギリスの教員養成は捉えがたいという問題意識の下,教員養成にかかわる大学のPGCEコース(学士号取得者対象)の指導者,教員志望学生,教育学研究者らの声を取り上げて教員養成の動向を多様な観点から明らかにし,その特質を作り上げているファクター,すなわち「学校基盤」,「パートナーシップ」,「校長のリーダーシップ」,「教職の専門性」といった教師文化の諸要素を取り出すことを試みたものである。本論で解明された点は次の5つである。(1)イギリスの教員養成には多様なルートがあるが,その原理は学校を基盤とする徒弟的養成であり,それは学校教師が自由主義や個人主義の教育エートスに方向づけられたカリキュラム編成上の自由と専門性を歴史のなかで獲得し行使してきたからである。(2)これを一般に進歩主義教育と称すが,その教師文化は今日も継承されているため中央政府との軋轢・葛藤は不可避である。だが,そのようななか,PGCE学生には教員養成大学と学校,NQTには学校とLEAsといった関係諸機関とのパートナーシップが重視されている。(3)この連携関係のなかで現れつつあるのは,教職の新しい専門性であるが,それは公共性の観点をもった「学級の自由」にかかわっている。(4)新しい専門性をもった教師集団のなかでイニシャティヴをとる校長は,指導,経営・運営の全責任を有しているが,それは近年創設された教員養成機関NCSLのように国家政策がダイレクトに反映する機関で養成するには限界がある。(5)なぜなら,校長のリーダーシップの根幹には,教育哲学,批判的分析能力,独立精神が不可欠であるからであり,今もなおこの校長文化は進歩的な学校を経営し,進歩主義教育をさらに探究するための原動力となっている。
- 2005-02-08
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