下顎位の変化が歯根膜咬筋反射に及ぼす影響について

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歯根膜咬筋反射が, 下顎位の変化によりどのような影響を受けるかを明らかにするために, 下顎を種々の下顎位に保持し, 咬筋に対する上顎大臼歯圧刺激の効果を定量的に比較検討した.実験には顎口腔系に異常の認められない成人男子3名を用いた.被験者はバイトブロックにて種々の下顎位(側方的変化7種, 垂直的変化3種)を保持した.各下顎位で上顎右側第一大臼歯に歯軸方向に圧刺激(手動で持続約2秒, 強さ約1 kgf)を加え, 右側咬筋から双極針電極にて筋電図を記録した.1. 刺激に対する反射効果は刺激前の筋の活動状態(background activity, 以下BGAと略す)により変化した.すなわち興奮反射はBGAが低い時に強く現れ, BGAが高くなると興奮効果が減弱し, ある一定のBGA以上では逆に抑制反射に転じた.各下顎位において反射応答が興奮から抑制に転じるBGAすなわちreversal levelを求め分散分析したところ, 下顎位によりreversal levelが異なることが明らかになった.2. 側方的変化では下顎位が右側方に偏位すると, reversal levelは同程度かわずかに増加し, 右側方位(小)または(中)で最大になった.さらに偏位量を増すとreversal levelは低下した.下顎位が左側方に偏位するとreversal levelはすみやかに低下した.3. 垂直的変化では, 開口量の増大に伴いreversal levelは段階的に低下した.以上より, 上顎大臼歯圧刺激時の歯根膜咬筋反射は下顎位により変化することが明らかになり, 咀嚼運動に対する統合的な反射性調節機構の一部として働いていることが示唆された.
日本矯正歯科学会の論文

下顎位の変化が歯根膜咬筋反射に及ぼす影響について

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