牛歯エナメル質におけるin vitro再石灰化の時経列変化

概要

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本研究はin vitro再石灰化処理の最適期間の確立のために,再石灰化の経時的変化を検討した。ウシ下顎切歯より8×8mmのエナメル質ブロツクを切り出し,唇面を浸潤状態で研磨して平滑な新鮮エナメル質面を露出させた。その試料を6wt%カルボキシメチルセルロース含有0.1M乳酸ゲル(pH5)にて37℃で3週間浸漬して人工初期齲蝕を形成した。これらは7群に分けられた(12試料/群)。このうち1群は脱灰で処理を終了し,別の1群はCaおよびPを含まない再石灰化液(20mM HEPES, 130mM KCI, pH7)に37℃で8日間浸漬した。他の5群はKH_2PO_4濃度を2.24, 1.28, 0.90, 0.69, 0.56mMに変化させることによってCa/P比を0.67,1.17,1.67, 2.17, 2.67に調節した再石灰化液(20mM HEPES, 1.5 mM CaC1_2, 130mM KC1, pH7)に37℃で8日間浸漬した。ミネラルの回復を経時的に評価するために再石灰化2日目,4日目にエナメル質表面を部分的にネイルバーニツシュでマスキングした。各試料から厚さ約80μmの平行薄切片を作製し,マイクロラジオグラフ(MR)を撮影した。ミネラル濃度分布を,稲葉らのCAVおよびMDAの手法によって解析し,脱灰深度(I_d,μm)とミネラル喪失量(△Z,vo1%・μm)を計測した。ミネラル獲得量(△M,vol%・μm)は,各再石灰化群の△Z値から脱灰のみの△Z値(A群;4,565±935vol%・μm)を引いて求めた。各計測値の処理日数間の検定はNewman-Keulsの多重比較法を用いた。その結果,ミネラル喪失量,脱灰深度およびミネラル獲得量とも2日目,4日目に変化が有意に大きく(p<0.05),8日目には変化が小さかった。各群のミネラル獲得量は8日目を100%とすると2日目には約40〜50%, 4日目には約85%に速していた。再石灰化液のCa/P比の条件が異なっても時間の経過とともに再石灰化速度が低下したことから,再石灰化前期(2日目あるいは4日目)のほうが後期(4〜8日目)よりも反応速度が速いということが得られた。つまり, in vitroで再石灰化の程度を比較する際には,むしろ処理の早い時期で検討することが適切と考えられた。
有限責任中間法人日本口腔衛生学会の論文
1998-07-30

牛歯エナメル質におけるin vitro再石灰化の時経列変化

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