上顎第一乳臼歯と第一小臼歯の同時抜歯例に関する臨床的考察

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前歯部に著しい叢生をきたす症例では, 早期に第一小臼歯を摘出して, 犬歯の萌出余地を獲得しておくことが望ましい.このことに関して上顎第一乳臼歯の抜歯と第一小臼歯の摘出を同時に行った症例について, 犬歯の位置変化を通常の連続抜歯症例と比較した.対象には同時抜歯7例, 連続抜歯10例を用い, 石膏模型上で歯冠幅径, 犬歯間距離, 前歯部歯列弓長径, arch length discrepancyを求めた.また, 45°斜位頭部X線規格写真から犬歯の歯軸傾斜と深さの経時的変化, 犬歯と第二小臼歯の萌出後の関係を検討した.その結果, 第一小臼歯抜歯後の犬歯の遠心移動は同時抜歯での前歯部歯冠幅径の総和が大きい例で顕著に認められた.歯列の計測結果から上顎犬歯間距離は平均37.9mm, 前歯部歯列弓長径は平均9.4mmであった.一方, 連続抜歯例では前者は平均35.6mm, 後者は平均7.7mmで, 同時抜歯例が有意に大きな値を示した.また, 犬歯萌出後の第二小臼歯に対する歯軸傾斜角は, 同時抜歯例では右側平均4.4°, 左側平均4.6°で正常咬合(6∿9°)に近い歯軸傾斜角であった.これに対して連続抜歯例では右側平均-0.8°, 左側平均-1.9°で両者の歯根は開いていた.以上のことから, 前歯部での歯と顎骨の不調和が著しい場合において, 同時抜歯法を適用し早期に犬歯の遠心移動を促すことが, 叢生症状の緩和, 萌出後の歯軸の関係等に有効であり, また, その後の歯の再排列も有利であると考えられた.
日本矯正歯科学会の論文

上顎第一乳臼歯と第一小臼歯の同時抜歯例に関する臨床的考察

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