猫リンパ腫細胞における中心体過剰複製と染色体不安定性(臨床病理学)

概要

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猫の腫瘍細胞における中心体過剰複製と染色体不安定性を明らかにする目的で,新たに猫リンパ腫細胞株を樹立し,これまでに樹立されていた4細胞株とともに中心体免疫染色ならびに染色体数算定を行った.さらに,それら細胞株におけるp53遺伝子変異ならびにmdm2遺伝子過剰発現を解析した.その結果,2細胞株では健常猫末梢血単核球細胞と比べ中心体過剰複製と染色体不安定性に変化は認めらなかったが,残りの3細胞株で中心体過剰複製と染色体不安定性が認められた.また,中心体過剰複製の認められた3細胞株中1細胞株でP53アミノ酸変異を認めたが,残りの2細胞株ではP53アミノ酸変異は認められなかった.一方,mdm2遺伝子の過剰発現は健常猫末梢血単核球細胞と比べいずれの細胞株でも認められなかった.以上の結果から,猫の腫瘍細胞においても中心体過剰複製が認められること,ならびに,この中心体過剰複製は染色体不安定性と強い相関を持つことが明らかとなり,中心体過剰複製の評価が染色体不安定性の簡便な評価法となりうる可能性が示唆された.また,猫のリンパ腫における中心体過剰複製の原因には未知の機構が存在している可能性が示唆された.
社団法人日本獣医学会の論文
2004-07-25