リポソームを応用した経口ワクチンの開発:経口投与可能なリポソームの脂質組成の検討ならびに経口投与によるIgA免疫誘導
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概要
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リポソームを経口ワクチンへ応用するために, pH2.0, 膵液ならびに胆汁存在下でも安定なリポソームの脂質組成を検討し, 経口投与後のIgA抗体産生能について調べた. 経口投与リポソームは, dipalmitoylphosphatidylcholine (DPPC) とcholesterol (Chol) からなるもの, DPPC, dipalmitoylphosphatidylserine (DPPS), Cholからなるもの, distearoylphosphatidylcholine (DSPC) とCholからなるもの, DSPC, DPPS, Cholからなるものを作製し, Tris-HCl buffer (pH2.0), 10%bovine bileならびに2.8%pancreatin液中での安定性を調べた. その結果, DPPC, DPPS, Chol (モル比1:1:2) の脂質組成から作製されたリポソーム, DSPCとChol (モル比7:2) の脂質組成から作製されたリポソームならびにDSPC, DPPS, Chol (モル比7:3:2あるいは1:1:2) の脂質組成から作製されたリポソームは, pH2.0, 10%bile液ならびに2.8%pancreatin液中でも安定であったが, DPPCとChol (モル比7:2) の脂質組成から作製されたリポソームとDPPC, DPPS, Chol (モル比7:3:2) の脂質組成から作製されたリポソームは, pH2.0ならびに10%bile液中で不安定であった. 安定なリポソームのうち, DPPC, DPPS, Chol (モル比1:1:2) の脂質組成からなるリポソームにganglioside GM1を組み込み経口投与し, 血清中のganglioside GM1に対するIgA抗体の産生について調べた. その結果, ganglioside GM1に対する抗体はIgA型抗体のみ産生され, IgG型ならびにIgM型抗体は産生されなかった. さらに, アジュバントとしてmomophosphoryl lipid Aをリポソームに組み込み経口投与した場合, IgA抗体の産生がさらに増強された. 一方, 不安定なリポソームにganglioside GM1を組み込み経口投与した場合には, IgA抗体の産生は誘導されなかった. これらの結果から, 酸性溶液中 (pH2.0), 胆汁中ならびに膵液中で安定なリポソームは, 経口投与によりIgA抗体を効果的に誘導できることが明らかとなり, リポソームを応用した経口ワクチンの開発の可能性が示された.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1997-12-25
著者
-
渡来 仁
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻獣医免疫学教室
-
保田 立二
岡山大学医学部分子細胞医学研究施設
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保田 立二
岡山大学医学部(附)分子細胞医学研究施設細胞工学部門
-
保田 立二
岡山大学医学部附属分子細胞医学研究施設
-
保田 立二
岡山大学医学部
-
渡来 仁
岡山大学医学部(附)分子細胞医学研究施設細胞工学部門
-
小林 和子
岡山大学医学部(附)分子細胞医学研究施設細胞工学部門
-
韓 海
岡山大学医学部(附)分子細胞医学研究施設細胞工学部門
-
韓 梅
岡山大学医学部(附)分子細胞医学研究施設細胞工学部門
-
渡来 仁
大阪府立大学生命環境科学研究科獣医免疫学教室
-
保田 立二
東大医科研
-
韓 梅
岡山大学医学部附属分子細胞医学研究施設細胞工学部門
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