福岡地方における日本脳炎媒介蚊の出現消長と保毒状況, 1966 年の成績
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概要
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1965年までは, 調査地点を粕屋郡内橋に固定してきたが, より広範な地域における状況を把握するために, 1966年には内橋とそれに隣接する阿恵のほかに福岡市金武および三井郡三沢において調査を行なつた.そのうち, 金武における成績はすでに発表した(山本ら(1968b))ので, 本報では1966年6月〜10月にわたり内橋・阿恵および三沢において調査した成績を示し, それらの成績および金武における成績を相互に比較, 検討した.また, 当年の成績を従らいの成績と比較し, 媒介蚊汚染と日本脳炎ヒト流行の大きさとの関連についても予備的な考察を行なつた.日本脳炎媒介蚊の出現消長は調査地点ごとにかなり相異があるようであつたが, その最盛期はいずれの地点でも7月下旬〜8月上旬に観察された.媒介蚊汚染に関しては, 阿恵において先駆的な汚染が認められたほかは, その時期, 期間, 様相において各地点ごとの成績はおおよそ一致しており, 福岡市周辺の各地で媒介蚊の汚染状況は異ならなかつたようである.1966年には, 西日本各地におけると同様に, 当地方でもいちじるしく大型の日本脳炎ヒト流行があつた.しかし当年の媒介蚊汚染状況をウイルス分離成績によつて他の年のそれらと比較すると, その期間, 分離率では差を見出せないが, その時期は中型ヒト流行のあつた1964年, 1965年よりもおおよそ3週間おそく, やはり大型ヒト流行のあつた1963年とほぼ同じであつた.このことから, 1963年および1966年では自然界で日本脳炎ウイルスのいつせい増幅があつたと推定される時期が媒介蚊個体群密度が極大になつた時期と合致しているのに対し, 1964年および1965年ではその時期が媒介蚊個体群密度がかなり低い時期であつたことがわかる.したがつて, 媒介蚊汚染率は毎年ほぼ一定であつたとしても, 各年に出現した媒介蚊汚染個体群の大きさに極端な差が生じ, それが各年のヒト流行の大きさを支配した要因であつたように思われる.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1970-08-15
著者
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山本 英穂
福岡県衛生公害センター環境生物課
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真子 憲治
The Fukuoka Prefectural Institute Of Public Health
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山本 英穂
The Fukuoka Prefectural Institute of Public Health
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