福岡地方における蚊のアルボウイルス感染に関する研究 : 3. 1963-1972 年間における蚊の日本脳炎ウイルス自然感染
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概要
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該当期間内に福岡地方に普通に産する5種の蚊の野外採集材料を用いて, 日本脳炎ウイルス(JEV)保有を蚊組織懸濁液の哺乳マウス脳内接種法により検索した結果, JEV自然感染は, コガタアカイエカだけでは毎年高い頻度で証明されたが, 他種の蚊では証明できなかった。コガタアカイエカにおけるJEV自然感染パターンを毎年の成績から類型化すると, 典型的には, 一過性の先がけ的な保毒現象の約2週間後に同蚊の集中的な保毒が4∿5週間継続するといえた。またコガタアカイエカのJEV保毒率は時として異常なパターンで推移したが, それは同蚊母集団の年齢構成の推移に関連すると考えられた。当地方におけるコガタアカイエカのJEV自然感染は, 1963∿1967年間では, 同蚊個体群の季節的増加の過程において発生したのに対し, 1968∿1972年間では, しばしばその減少過程において発生するようになった。このことは, 生産される保毒蚊の量および保毒蚊のその後の動態と関連するため, 疫学的に重要な意義があったと考えられるなお, この継続研究は, 1963∿1967年間は福岡県粕屋郡内で, 1968∿1972年間では大部分福岡市金武地区内で実施されたが, この間に, 両地域間において全期間調査を再度同時的に行った。その結果では, コガタアカイエカのJEV自然感染の時期, 様相は両地域間で大きな差はなかった。したがって, 前記のことはコガタアカイエカのJEV自然感染における年次変動と考えてよいであろう。
- 日本衛生動物学会の論文
- 1981-03-15
著者
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