福岡地方における蚊のアルボウイルス感染に関する研究 : 1. 予備検討 : ウイルス分離用野外採集蚊材料に関する検討
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概要
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福岡地方における蚊のアルボウイルス野外感染に関する一連の疫学的研究の実施にさいし, 野外採集蚊からのウイルス分離に伴う二つの基礎的な問題を予備的に検討し, 以後の野外研究に用いた手法の基礎を明らかにした。第1の検討事項として, コガタアカイエカの日本脳炎ウイルス(JEV)保有率が同じ日に同じ場所で同時採集されたサンプル間でも採集方法によって異なるかどうかを検討した。その結果, 畜舎内吸虫管捕集法によって得られたサンプルと同一畜舎内で運転したライト・トラップによって得られたサンプルとを比較したとき, JEV保有率は前者における方が後者におけるよりも多くの場合明らかに高かった。したがって, 採集方法の差によって異なった値の媒介蚊ウイルス保有率が得られることがわかった。第2の検討事項では, 野外採集した飽血蚊をウイルス分離試験に供した場合, 蚊の中腸中に吸入された動物血からウイルスが分離される可能性を実例によって検討した。すなわち, JEV自然感染しないことが判明しているシナハマダラカ群の雌蚊を, ブタの激烈なJEV感染の時期に, 豚舎内で採集し, それらを非飽血個体と飽血個体に分け, ウイルス分離を行なった。その結果, 非飽血個体からはまったくウイルスは分離されなかったが, 飽血個体では2例のJEV陽性例があり, 両例とも蚊組織からではなく中腸中の吸入血から由来したらしく判断された。このことにより, 飽血雌を含む蚊材料からのウイルス分離例は蚊のアルボウイルス野外感染に関し, しばしば誤った情報をもたらすおそれが少なくないことが推察された。以上二つの結果に基づき, 本シリーズの一連の野外研究では, ウイルス分離用蚊材料の野外採集は, すべての場合, 畜舎内吸虫管捕集法に統一し, かつ, 中腸中にまったく吸入血を有しない蚊だけを厳重に選別してウイルス分離に供することにした。
- 1978-12-15
著者
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