花蜜によるイエカ属成虫の飼育実験

概要

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イエカ属雌雄成虫に蜜源となるような花を与え, 直接花蜜を摂取させた場合, 水や0.5%蔗糖液を与えた対照に比較して蚊の生存状態がどのように異なるか観察した.花はアブラナ, レンゲ, シロツメクサ, ヤブカラシの4種を用い, 田畑や路傍などで開花している自然の花を摘み, これを三角コルベンに挿し, 30cm角ステンレス製飼育かご内で羽化させた雌雄混合の蚊に与え, 自由に吸蜜させた.蚊はチカイエカ, アカイエカ, コガタアカイエカの3種を適宜用いた.また一方では血液の蚊寿命におよぼす影響をしらべるため, 雌成虫にマウスを1回または2回吸血させ, その後水のみ与えて飼育した場合の寿命について検討した.実験は, 1970年4〜9月に室温下で行なつた.結果の概要は次のとおりである.1) 4種の花のうち, シロツメクサ以外の花はの蚊の雌雄により吸蜜され, 蚊の寿命を延ばすのに役立つことがわかつた.しかし, 50%生存日数は対照の蔗糖液給餌群よりかなり短かく, 雌の場合の両者の開きはアブラナ9日以上, レンゲ5日以上, ヤブカラシ20日であり, 雄では2〜4日であつた.雌の最大生存日数はアブラナでは25日, レンゲおよびヤブカラシでは1カ月以上におよび, 後二者の生存日数は共に蔗糖液に匹敵した.雄は雌より短かく, 2週間前後の生存が一般的であつた.2) シロツメクサ給餌群が示した生存曲線は対照の水を与えた場合とほとんど差がないか, または水より早く死亡した.おそらく吻の長さが短かいために, 蜜腺まで届かないことが原因と思われた.3) 蚊にマウスを吸血させたのち水を与えて飼育すると, 吸血後3〜4日目までは70〜80%以上の生存率を保つているが, それ以後急速に死滅し, 同一個体群を再吸血させた場合でも寿命が3〜4日延びるだけで, この関係はあまり変らなかつた.したがつて, 自然界で蚊が吸血と産卵をくり返す場合, その間十分な寿命を維持するためには, 血液以外に花蜜その他なんらかの栄養源を摂取するものと思われる.
1971-05-20

花蜜によるイエカ属成虫の飼育実験

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