コガタアカイエカの生態, とくに吸血と産卵を中心にして (第 3 報)
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概要
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野外採集の吸血コガタアカイエカを個別に, またはケージに集団飼育し, 5%または0.5%庶糖液を与え, おのおのの産卵経過, 産卵率, 経産回数と卵数との関係, 残留卵保有率などを月別に調査した.また, 野外吸血蚊より得られた次代成虫につき, マウス給血後の卵巣発育状態を季節的にしらべた.実験に用いた吸血蚊は, 横浜市旭区の豚舍内でライト・トラップにより採集した.実験期間は1968〜9年6〜9月である.1.初産個体を個別飼育した場合の産卵経過を累積産卵率でしらべた結果, 6〜7月は0.5%糖液のほうが産卵速度早く, 1週間で約90%の産卵率を示したが, 5%糖液では60〜70%であつた.8〜9月は両者の産卵経過にほとんど差が無く, とくに9月の産卵は最も速かに行なわれた.未受精卵の産卵も, 例外を除き, とくに遅延することはなかつた.しかし, 集団飼育例では一般に産卵所要日数が長びいた.2.個別飼育による産卵率は, 糖液の濃度にかかわらず季節的に有意差なく, 6〜9月間平均0.5%糖液が94.2%, 5%糖液が96.2%であり, 両産卵率の間に有意差はなかつた.ただし, 卵巣成熟率はどちらも100%であつた.3.吸血個体が摂取する糖液濃度の相違は産卵数に影響がなく, 初産個体の6〜9月間平均卵数は0.5%糖液が233.3個, 5%糖液が239.3個であり, 有意差はみられなかつた.経産回数別(初産または2回以上経産)の月平均卵数にも季節的変化はみられなかつた.4.糖液の濃度に関係なく, 産卵個体の25%に残留卵が認められた.また, 残留卵数が極めて多い場合, ある日数間隔をおいて2〜3回に分割産卵される例があつた.5.実験室内での産卵も含めると, 全産卵個体に対する2回以上経産個体の出現率は季節の進むに従い増加し, とくに8月は40%, 9月は64%に達した.このような老令個体の占める割合の増加は, 野外個体群の産卵数と逆比例するので, 本種に特有な季節消長パターンと密接な関係があるものと思われる.6.マウス吸血後の栄養生殖分離出現は, 糖液の濃度に関係なく8月下旬ないし9月上旬に発育を開始する世代から顕著に認められた, しかし, 蛹期以後28〜30℃に移した場合はその出現率が極めて低く, 温度による影響が大きいと考えられた。
- 日本衛生動物学会の論文
- 1970-04-30
著者
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