日本産オオカ類の室内飼育系統化の成功
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概要
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われわれは従来室内での飼育系統化が困難と考えられていたオオカ類のうち, 日本産のToxorhynchites towadensis(トワダオオカ), Tx. sp.(沖繩産未記載種), Tx. manicatus yaeyame(ヤエヤマオオカ)の継代飼育系統の確立に成功したのでその方法の詳細について述べるとともに, 孵化から羽化までの日数, 人工交尾時における交尾時間, 産卵数などについても測定値を与えた。継代飼育を困難ならしめる最大の原因の一つは交尾にあると考えられる。そこで普通のケージ内で産卵しない種では, やや大型のケージに黒いビニールのカバーをかけて内部を暗くし, 天井に小窓をあけて光が上方からのみ射すようにして, 雌雄がともに飛立って交尾する機会が多くなるように計った。その結果, トワダオオカは容易に交尾・産卵するようになった。この方法でもまだ産卵数の少ない沖繩のオオカやほとんど産卵しないヤエヤマオオカの場合には, 次世代の子孫を得るために人工強制交尾法を行って産卵させることに成功した。孵化から羽化までに要する日数はいずれも19-20日であった。これらの方法を応用すれば世界のどのオオカでも必要に応じて大量に飼育することが可能になると考えられる。オオカを用いての疾病媒介蚊の生物学的防除法には従来種々の難点があったが, この方法を応用して標的媒介蚊や環境に最も適した世界中のどのオオカの種類や系統でも大量に放すことができればその成果は大いに期待されてよいであろう。
- 1985-06-15
著者
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堀尾 政博
産業医科大学・医学部・寄生虫学熱帯医学教室
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堀尾 政博
産業医科大学医学部寄生虫学熱帯医学教室
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堀尾 政博
産業医科大学医動物学教室
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塚本 増久
産業医科大学医動物学教室
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塚本 増久
産業医科大学
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