タイ国産ガガイモ科の分類学的ノート : II.Streptocaulon属
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概要
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Streptocaulon属の植物は,つる性で,直径1cmに満たない星型の花をつける。この属はインドの半島部,マレー半島,インドシナ半島,中国の南部,フィリピンにかけ5種知られる小さな属である。タイのStreptocaulon属については,Kerr(1951),Suvatti(1978)等が報告しているが,彼らの間では種の数が一致していない。ガガイモ科の植物は,タイではわずかの種として,どこででも採集されるというものではなく,タイ国王立森林局や京都大学の標本庫の標本も少ない。そのこともあって,なかなか同定作業が進まないが,Streptocaulonは,林縁や道端によく見られる属で,最近の20年間で相当な数の標本が得られており,タイ国産の種がかなりはっきりしてきたように思われる。筆者は,これら蓄積された標本と野外での観察に基づいて,Streptocaulon juventas, S. Kleinii, S. Wallichiiの3種を同定することができた。また,ガガイモ科の属や亜科レベルで分類を考える上で重要な形質である花の構造について,前報(Konta & Kitagawa, 1989)に引き続いてS. juventasとS. Wallichiiを用いて観察することができた。これらの花では,花粉塊が発達せず,花粉は四分子の状態でフォーク型の運搬装置に載っている(図1-6, 7)。四分子は四面体型や十文字型で,線型の四分子のみを持つイケマ属など,ガガイモ科の中で進化した属といわれるものとは異なっている。一方,1枚の珠皮を持つ倒生の胚珠が亜辺縁胎座に着くこと,雄ずい性副花冠を持つことでは,Streptocaulon属はイケマ属などと同様である。
- 日本植物分類学会の論文
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