ジャコウシダのノコギリシダ属からオオシケシダ属への変更
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概要
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ジャコウシダ(Diplazium formosanum)は,メシダ亜科メシダ連において稀にしか見られない網状脈を持つ。網状脈と特徴的な多細胞毛の形質をもとにDictyodromaという属として扱われる一方,網状脈を持つイワヤシダ属Diplaziopsisやノコギリシダ属Diplaziumの中で網状脈を持つ種との類縁関係が示唆されてきた。しかし,著者らによるrbcL遺伝子の塩基配列による分子系統解析から,この種はオオシケシダ属Depariaに含まれるという結果が示された(佐野ほか,2000)。この系統関係はジャコウシダが,有節の多細胞毛や羽軸の溝と中軸の溝との不連続性といった,オオシケシダ属の指標形質を持つことから支持される。また染色体の基本数がイワヤシダ属やノコギリシダ属にみられる41ではなくオオシケシダ属にみられる40であること,胞子の表面形態,中軸の溝の横断面での形状がノコギリシダ属とは異なりオオシケシダ属に似ていること,といった点もジャコウシダがオオシケシダ属に含まれるというrbcL遺伝子の結果を支持している。以上よりジャコウシダは網状脈という形質を獲得したオオシケシダ属の1種であると判断し,その学名をDeparia formosana (Rosenst.) R. Sanoに変更する。また,ジャコウシダと共にDictyodromaとして扱われる近縁3種に対しても,同様にDepariaへの新組合せを提案する。
- 日本植物分類学会の論文
- 2000-09-12
著者
-
長谷部 光泰
National Institute for Basic Biology
-
長谷部 光泰
基礎生物学研究所種分化機構第二部門
-
伊藤 元己
千葉大学理学部生物
-
栗田 子郎
千葉大学理学部生物学科
-
佐野 亮輔
基礎生物学研究所種分化機構第二部門
-
佐野 亮輔
基礎生物学研究所種分化機構第二部門:千葉大学理学部生物
-
長谷部 光泰
基礎生物学研究所
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