イネにおける雄性不稔細胞質, 稔性回復遺伝子の同定および稔性回復遺伝子の同座性検定
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概要
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3つの稔性回復系統RT61C, RT98CおよびRT102Cのもつ雄性不稔細胞質および稔性回復遺伝子を同定するとともに稔性回復遺伝子についてはさらに同座性の検定を行った.これらの系統は野生稲Oryza rufipogonの異なる3系統の細胞質および稔性回復遺伝子を連続戻し交雑法により, 栽培稲台中65号に導入した系統である.稔性回復遺伝子はいずれの系統においても単一座の優性遺伝子をもつことがわかっている.実験に先立ち, それぞれの稔性回復系統に台中65号を父本として2回交雑し, 劣性の遺伝子をもつ不稔系統RT61A, RT98AおよびRT102Aを育成した.これらは検定系統として次の交雑に用いられた.まず, 稔性回復系統を起源を異にする他の2不稔系統と交雑した.RT61A/RT98CのF_1では稔性を回復したが, RT98A/RT61Cでは完全不稔であった.それゆえにRT61Cのもつ細胞質および稔性回復遺伝子はRT98Cのもつそれらとは異なっていた.RT61A/RT102CのF_1は高い種子稔性を示したが, RT102A/RT61CのF_1では完全不稔を示した.したがって, RT61Cの細胞質および稔性回復遺伝子はRT102Cのそれらとは異なっていた.RT102A/RT98CのF_1は稔性を回復したが, RT98A/RT102CのF_1は完全不稔であった.ここでもRT98とRT102Cは細胞質および稔性回復遺伝子をそれぞれ異にしていた.結局, 3つの稔性回復系統はそれぞれ異なる細胞質および稔性回復遺伝子をもっていた.次に, 稔性回復遺伝子の同座性検定を行った.各稔性回復系統間のF_1に台中65号を交雑した.RT98C/RT61C//台中65号, RT98C/RT102C//台中65号, RT102C/RT61C//台中65号の交雑では不稔個体と稔個体が半数ずつに分離したため検定することができなかった.しかしRT61C/RT98C//台中65号, RT61C/RT102C//台中65号およびRT102C/RT98C//台中65号の交雑ではいずれの場合も不稔個体が出現しなかった.これは3稔性回復系統の稔性回復遺伝子が同座を占めることを示すものであった.
- 日本熱帯農業学会の論文
- 1996-09-01
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