瞳孔筋系の逆モデルによる自律神経入力の推定

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生体における自律機能の明確かつ基本的な例として,瞳孔調節系は古くから生体・生理工学的研究の対象とされてきた.本論文では,そうした瞳孔制御のメカニズムを解明する上で重要なかぎとなる.中枢から瞳孔筋系へ送られる神経入力の性質を調べるための方法を提案する.この方法は,これまでに構築し,その妥当性を確認した瞳孔筋系モデルの述モデルを導き,これにより瞳孔応答から筋系への自律神経入力を推定するものである.はじめに,一般に不良設定となる腕の関節角と同様な拮抗筋の張力差によって決まる運動の逆問題において,瞳孔筋系の場合,縮瞳筋と散瞳筋へ入力する神経活動の相反関係と両筋の反応むだ時間の差を利用することにより,解が一意に求まることを示す.次に,こうした逆モデルの適用例として,ステップ応答実験データからこれを生成する自律神経入力の推定を試みる.そして,推定結果が従来の動物実験の結果と定性的に一致することを示し,入力推定結果の妥当性を確認する.また,この推定結果からステップ応答時の瞳孔制御についていくつかの考察を加える.こうした瞳孔筋系の逆モデルによる自律神経入力推定法は,外部からの観測が容易な瞳孔径の変化から筋系の非線形な特性を除去した純粋な自律神経入力の推定を可能とするものであり,新たな非侵襲的自律神経系活動モニタとして医療への応用も期待できる.
社団法人電子情報通信学会の論文
1994-01-25

瞳孔筋系の逆モデルによる自律神経入力の推定

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