小自由度カオスの工学的応用
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概要
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1960年代の発見期から30年余り経た今日、非線形動力学系の不規則な現象であるカオスの工学的応用が精力的に研究されている. 既に, 米国では統計物理学者D.FarmerのPrediction Company, あるいは応用数学者M. F. BarnsleyのIterated System Inc. のベンチャー企業が設立されており、国内では幾つかの電気メーカの家電製品にも利用されている. カオス現象には, 確率論的特性と決定論的特性が共存しており、注目すべき力特性を列記するだけでも, 安定性, 軌道不安定性(長期予測不可能性/バタフライ効果), 位相混合性, 不変集合の双曲性, 不変集合(測度)の自己相似性, 分岐構造の自己相似性, 共鳴現象など多様さを持っている. そこで, 本講演では, これらカオスの豊かな特性に注目した応用例を概説していく. 1.フラクタル画像符号化法 濃淡画像データをブロック分割し, 各ブロック上の画素値を比較すると多くの類似したパターンを持つブロックが存在することが分かる. そこで, この画像データを伝送する場合, 各ブロックを画素値の類似度で幾つかのカテゴリに分類し, あらかじめカテゴリのインデックスとその代表の画素値をテーブル(コードブック)として受信側に渡しておけば, ブロックの属すカテゴリのインデックスだけを送信することで少ないデータ量で画像を伝送できる. このベクトル量子化法は, ブロック間の合同性を冗長性として取り除くものある. これに対して, M.Barnsleyらは, ブロック間の相似性に注目するフラクタル符号化法を提案した. 1. 1 縮小変換による画像情報符号化法 A. Jacquinの方法では, 符号化対象となる画像データTをあらかじめ一定の大きさの小ブロック(レンジ){R_i}に分割し, 個々のレンジブロックの近似を与えるブロックを生成するための大ブロック(ドメイン){D_i}と操作を考慮する. 例えば, ドメインDが, 64画素の正方ブロックであり, レンジRが16画素の正方ブロックであるなら, 近似ブロックを得る操作とは以下の5つである. (1)D_i上の64の画素値を, 16の画素値に圧縮する. (2)ブロックの回転および裏返しによる8つの等長変換で画素を入れ替える. (3)画素値に適当な係数α_iをかけて, 縮小する. (4)画素値に適当な定数δ_iを加減し, 平行移動する. (5)R_i上の画素値と置き換える.
- 一般社団法人電子情報通信学会の論文
- 1995-10-24
著者
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