神経因性膀胱に対する尿管膀胱新吻合術 : 術後水腎症の検討
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概要
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63名の神経因性膀胱による二次性膀胱尿管逆流に対して、1980年から1992年の間に行われた尿管膀胱新吻合術68例の膀胱造影、尿路造影、膀胱尿道内圧測定成績を解析し、術後の水腎症に関係する要因を検討した。手術直後の水腎症の出現または増悪は26例に観察された(悪化群)。それ以外の42例(非悪化群)と比較すると膀胱変形、VURグレード、術前の水腎症、膀胱内圧曲線タイプ(areflexia、hyperreflexia)、手術要因のどれも違いは無かった。Hyperreflexia例の場合、最大膀胱容量、最大膀胱内圧、最高尿道内圧は両群間で有意差が無かった。しかしareflexia例では最大膀胱内圧、最高尿道内圧は差が無かったものの、悪化群の最大膀胱容量(290±35ml)は非悪化群(370±35ml)より有意に小さく(p=0.03)、10ml/cmH_2以下の低コンプライアンス膀胱の割合は悪化群に有意に多かった(p=0.05。また膀胱変形例が悪化群に多い傾向があった(p=0.06)。Hyperreflexiaでは排尿筋の過活動が術後水腎症に寄与する割合が大きいのに対しAreflexiaではそれが乏しいため、膀胱変形や小容量、低コンプライアンス膀胱が術後水腎症の悪化に直接反映されると推測される。経過観察中(6〜132ヵ月、平均42ヵ月)に水腎症や腎瘢痕の進行例や再手術例は認められず、大半例で水腎症は消失した。水腎症に関して神経因性膀胱の尿管膀胱新吻合術は原発性VURの場合と変わらず晩期合併症は少ない。
- 社団法人日本泌尿器科学会の論文
- 1994-05-20
著者
-
岡田 英一郎
総合せき損センター泌尿器科
-
岩坪 暎二
北九州古賀病院排泄指導管理室
-
岩坪 暎二
労働福祉事業団体総合せき損センター泌尿器科
-
岡田 英一郎
労働福祉事業団総合せき損センター泌尿器科
-
竹原 俊幸
労働福祉事業団総合せき損センター泌尿器科
-
玉田 耕治
労働福祉事業団総合せき損センター泌尿器科
-
玉田 耕治
九州大学・生医研・免疫:九州大学・泌尿器
-
竹原 俊幸
おがわクリニック
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