鈍的腎損傷の治療成績と手術適応に関する考察

概要

論文の詳細を見る
(目的)腎損傷症例の大部分は軽傷で,保存的治療で合併症なく治癒するが,われわれは中高度損傷例に対して腎損傷程度診断にもとづき,受傷後早期に手術適応を判断して腎温存を目的とした手術治療を行ってきた.腎損傷の最適治療法を検討するため,成績を評価するとともに,手術適応について考察した.(対象および方法)22年9カ月間に経験した鈍的腎損傷症例106例を検討した.手術症例は後腹膜腔に到達後速やかに腎茎部を遮断し,損傷腎を十分観察して腎修復可能かどうかを判断した.(結果)保存的治療を63例,手術治療を43例(腎修復術22例,腎摘除術21例)に施行した.I度損傷は50例全例で保存的治療が可能であった.II,III度損傷20例中8例に手術治療を行い,全例腎温存が可能であったが多くは保存的治療が可能と思われた.茎部損傷を含むIV,V度損傷37例では保存的治療2例,腎修復術14例,腎摘除術21例であった.茎部損傷4例は全例腎摘除術を行った.手術治療群は保存的治療群より,また腎摘除術例は腎修復術例より収縮期血圧,赤血球数,術中出血量,総輸血量でみると重傷例が多かった.手術適応,腎摘除術適応は適切に決められていたが,一部症例は過剰治療と思われた.(結論)腎損傷の治療方針決定には,画像診断による正確な損傷評価が必須で,適応症例は早期に手術を行い,積極的に腎修復を試みることで腎保存可能な症例を増加させることができると考えた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
2002-05-20

鈍的腎損傷の治療成績と手術適応に関する考察

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク