「統一前イタリア文学(田園小説)に見る農民問題」
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概要
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リソルジメントにおける農民問題の研究はこの五十年近く、グラムシによるその社会、経済的分析と共に歩んできたと云っても過言ではない。以前のいかなる時期にもまして農民問題が脚光を浴び、それ迄研究されることなく長期間放置されたままの諸問題がグラムシのオリエントメントに従って次々と研究領域にもち来らされ、農民問題は主に歴史、社会研究の分野で長足の進歩を見ることになった。穏健・デモクラートの農民問題に対する対応、農村における資本主義の発展段階、貧富の差から生ずる階層間のき裂、リソルジメントへの無関心等の複雑で綜合的な問題が究明され、農民問題を未解決にしたままに進行したリソルジメントが"半ば成功した"革命だとするグラムシの分析は、多くの賛成とそれにもました反論の渦をひきおこしたが、そのいずれに立つにせよ、農民問題がリソルジメントの最重要課題の一つであることにかわりはない。此のオリエントメントは大戦後のイタリアの文学研究の領域にも波及し、此のコンテキストに従って、初めて1800年代中葉の浪漫主義マイナー作家らの作品の原稿の発掘と再読、再評価の作業が進められ、いわゆる田園小説の全貌がやっと近来明らかになりつつある状況が生まれたのである。1800年代中葉の文学の再評価、発掘の作業は今やっと端緒に着いたばかりであり, 田園小説なるジャンルの文学史上の認知もまた浅い歴史的現在に属するものである。その事実を前提にして此の時期の文学作品発掘状況、再編成の動き等を見てみると、短期間な作業であった割りにはむしろその成果は大であったといわないではいられない。政治、社会変革とのみ見られて来たリソルジメントは、文学上の変革を伴うことによって、そのイメージを完璧たらしめることになるであろうからだ。
- イタリア学会の論文
- 1987-10-30
著者
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