イタロ・ズヴェヴォ : 《ゼーノの意識》についての一考察
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概要
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第二作《老年》の出版から二五年目の一九二三年、ズヴェヴォは「それは驚くほど強い啓示の一瞬であった。免がれようもない出来事であった。是が非でもその小説を仕上げる必要があった。」と彼自身が述懐するような強い決意に促ながされて《ゼーノの意識》の執筆にとりかかった。長期にわたる不活動にズヴェヴォを追いやった原因の一つはもちろん大戦であった、が一八九八年から一九二三年にわたるこの時期に生起した文学運動の変遷と成熟とを考慮にいれることなしにズヴェヴォの第三作《ゼーノの意識》を論じることは出来ない。ズヴェヴォ研究家ブルーノ・マイアーはその著書の第四章を《ゼーノの意識》の分析にさき、第三章においては《老年》以後のズヴェヴォの《ゼーノの意議》成立の内的醸成をジェームス・ジョイスとズヴェヴォの交遊と、ズヴェヴォの精神分析学上の知識獲得にもとめてそれぞれについて精細に論じている。大戦がいかなる影響をこの両者にあたえたかについてはジァコモ・デベネデッティが言う、「ズヴェヴォも、ジェームス・ジョイスも、ともにそれぞれの楝獄を(そこに)見出していた。」に説明を委ね、さらにジョイスとズヴェヴォとの交遊と芸術創造過程における内的影響については前掲マイヤーの諸論にゆずり、本論ではデベネデッテイの「先行期の小説史とは明らかに明確な区分をもって始まる時期-一九二〇年代」の文学の状況の変遷のなかにズヴェヴォをつれきたって、《ゼーノの意識》がそこで有する座標軸を明らかにし、あわせて精神分析学と彼の文学との交流をあとずけ一科学としての精神分析学をズヴェヴォが芸術創造にあたり、いかに薬籠中のものたらしめようとしたかをたずねることにする。
- イタリア学会の論文
- 1977-03-20
著者
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