原子吸光並びに可視吸光分析に関する基礎的研究
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概要
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本論文では原子吸光法で用いられるフレーム中での測定元素の原子分布,溶液相での原子吸光スペクトル観測の試み,水素化物発生法とオゾン気相化学発光法,及び吸光光度法の高感度化という四つの研究主題について述べた.第2章では空気-アセチレンフレーム及び一酸化二窒素-アセチレンフレーム内における原子分布を調べ,これをバーナーからの高さとアセチレン流量に対してプロットした(response surface plot).この結果,フレーム内の原子分布が,原子化の中間過程で生ずる二原子分子の安定性に依存して変化することを示した.更にクロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅の約50種の錯体を合成し,この水溶液を空気-アセチレンフレームに吹き込んだ際生ずる原子分布を測定し,これらの金属の原子吸光法における配位子の効果を論じた.第3章では水溶液中における原子吸光スペクトルの観測の可能性について論じた.金属イオン水溶液を電解する際,陰極の透過スペクトルを測定したが,原子に対応すると思われる吸収は得られなかった.一方,水銀の1価もしくは2価のイオンを還元剤で化学的に還元すると,金属水銀が生成する直前に,254nmを中心に強度比1:2に分裂した吸収スペクトルが測定できた.この吸収が水銀(O)に由来するものであるとすると,励起状態^3P_1が水の格子振動によって分裂するために生じた二重構造であることを理論的に説明できる.又,このスペクトルが生ずる状況から,水銀の溶液中の原子吸収に対応するものといえる.第4章では,ヒ素,アンチモン,スズ,セレンをテトラヒドロホウ酸ナトリウムで還元して水素化物とし,溶液から希ガス中に排除した後,オゾンと混合させると化学発光を生ずることを示し,これを上記元素の定量に応用した.更に還元気化法が定量的に行えないとされているリン酸に対し,石英ボート上でテトラヒドロホウ酸ナトリウム溶液と混合した後40℃で乾燥し,これを430℃に加熱した反応管に挿入することにより可能となること,又,この方法をガスクロマトグラフィーと組み合わせて天然水中のリンの定量ができることを示した.第5章では,吸光光度法を高感度化する方法として,レーザー誘起熱レンズ効果をリソ酸や亜硝酸の比色法に応用した例を示した.更にLambert-Beerの法則からセルの光路長を延長し,かつ必要試料量を抑える目的で,長光路毛細吸収管(以降LCCと略記,内径1〜2mm.長さ1m)を作製し,モリブデンプルー法に適用して高感度なリンの定量法となることを示した.又溶媒として屈折率がセル材質より高いもの(二硫化炭素など)を用いると,ウェーブガイド現象を生じて,セルの形状によらず高い光伝送性のLCCとなることが分かった.更にキャピラリーガスクロマトグラフィー用カラムを利用して50mまでの光ファイバー型LCC(内径250μm)を作製した.これにより必要試料量5cm^3以下で吸光度を1cmの光路長の一般の吸光法の10^4倍以上に増幅できることを示した.
- 1985-12-05
著者
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