場と一体化したプロセスの概念に基づく並列協調処理モデル
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概要
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協調処理モデルとは,比喩的に言えば,複数の人間が互いに相談したり助け合いながら,全体で一つの処理を実行するような計算モデルのことをいう.ここで重要な点として,各人は自分に関係することを原則としてすべて自分で処理する自律的な存在であり,管理者や指揮者に類する中央集権的な存在はない.すなわち,このモデルは,全体的な組織や制御の構造が前もってあまり規定できず,実行過程が各人の判断に委ねられるような応用のためのものである.協調処理モデルは,実行主体の自律性という点で,オブジェクト指向や並列/分散処理との親和性が高い.特に人工知能ないし知識処理の分野で,推論機構/知識の構造化や並列/分散処理との融合などについてブレークスルーをもたらすものとして期待されている.そして,協調型問題解決(cooperative problem solving),またはより一般的に分散人工知能(distributed artificial intelligence)という名称で,研究分野が形成されつつある.ここで,人間の知識処理のモデルとして活用されているだけでなく,高度な知識処理システムの基盤として有望視されているモデルに,いわゆる黒板モデル(blackboard model)がある.このモデルは,受信者を特定しない送信,および受信者の自律的な取捨選択を実現する点で,従来の並列処理モデルにおけるメッセージ通信機構の制約を克服するものであり,協調処理モデルの枠組の基盤としても有効である.本論文では,以上の考察に基づき,協調型問題解決を主な対象とする協調処理モデルを提案する.本モデルの本質は次の2点にある.実行主体としてのプロセスと通信媒体としての場を一体化し,これを階層的にネストさせる(他の協調処理モデルの多くにみられるような,プロセスと場を別個のオブジェクトとするアプローチはとらない).基本的な通信命令のみを用意し,通信の形式は通信命令の種別でなく,通信情報の属性で規定する(従来の並列処理モデルの多くにみられるような,通信形式ごとに個別の命令を用意するアプローチはとらない).これにより,次のような特長が実現する.プロセス,場(黒板),チャネル,メイルボックスなどがすべて,「プロセス+場」という唯一のオブジェクトに統合される.少数の統一化された命令のみで,直接送信,間接送信,放送,自律的受信,封鎖/非封鎖通信などの多様な通信が可能になる.通信形式の拡張も,整合性を保ったまま容易に行なえる.プログラム内だけでなくプログラム間の通信も,モデルの枠組の中で記述できる.一般の問題解決技法だけでなく,分割統治法などの再帰的な技法への柔軟な対応が可能になる.場を局所化することにより,検索オーヴァヘッドの低減,および情報のモジュール化が実現する.
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1989-10-16
著者
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