メタノール資化性酵母の分離とその培養条件
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概要
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メタノールを単一炭素源として生育する酵母を土壌から分離した.メタノール1%, 塩類, ビタミン類およびテトラサイクリンを含有する分離用培地に土壌サンプルを加え, 数回植継ぎをくりかえすことにより, バクテリアの生育をおさえ, 酵母を効率よく分離することができた.分離したメタノール資化性良好株24株を分離した結果, 全て無胞子酵母であり, Torulopsis属6種, Candida属1種に分類された.それらのうち5種は既知のCandida boidinii, Torulopsis torresii, Torulopsis bovina, Torulopsis anatomiae, Torulopsis cantarelliiと同定されたが, 他の2種は新種と見なされた.Torulopsis methanosorbosa ABE et YOKOTE sp. nov. (KY 12001FERM-P No.1208,ATCC 20361), Torulopsis methanodomerqii ABE et YOKOTE sp. nov (KY 12002,FERM-P No. 1978) と命名した.最もメタノールに生育が良好であったT. methanosorbosa KY 12001についてメタノール培地での生育条件を種々検討した.生育pH範囲は5.0〜6.0が最適であった.生育温度は40℃以下で最適温度は30℃であった.メタノール濃度5%までは生育を阻害せず, 既知のメタノール資化性細菌, 酵母に比べメタノールに対する耐性が認められた。生育因子としてチアミン塩酸塩, ビオチンを要求するがその影響を詳細に検討した結果, いずれも必須のものではなく生育促進的効果を示すものであった.メタノールを1%に保ち30℃pH5.5で5lジャー培養を行ったときの生育速度μmaxは0.092hr^<-1>であり47時間後の菌体濃度は17g/lであった.メタノール以外にエタノール, グリセリン, グルコース, アラビノース, マンノース, 乳糖, ラムノース, 果糖, ソルボースによく生育したが, プロパノール, ブタノール, メタノールアミン等のアミン類, およびホルムアルデヒドには生育が認められなかった.更にメタンも資化しなかった.メタノール生育菌体の粗蛋白含量は培養条件により異なるが57.1%から47.4%であり, 核酸含量は3.36%から2.82%であった.メタノール酸化系に関与するとされているグルタチオン含量は0.2%であり一般の公募の含量と大差なかった.
- 1974-04-25
著者
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阿部 重雄
協和醗酵工業株式会社東京研究所
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横手 保治
協和醗酵工業株式会社東京研究所
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杉本 正祐
協和醗酵工業株式会社東京研究所
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阿部 重雄
協和醗酵工業株式会社東京研究所 : 京都府立大学農学部
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阿部 重雄
協和醗酵工業株式会社, 東京研究所
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