スギノアカネトラカミキリによるスギの被害解析について III : スギの生長と被害との関係
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概要
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著者らはスギノアカネトラカミキリによるスギの被害は生育不良林分に多いことを前報で報告したが, 生長の良否がどのようにして被害度に影響するかについては明らかにしていない。著者らはこの原因を究明するために土壌型の異なった林地に成立する林分について枝の性状と被害との関係を調査し以下の結果を得た。(1) 個々の立木における被害はその垂直分布から次の2型に分類できる。すなわち, I型は地位の良好な林地(BD型土壌)に成立する林木の被害で, それは枝下高付近に集中し樹幹下部に少ない。II型は地味の不良な林地(BB(W)BB型土壌)の林木にみられ, 被害は樹幹下部から上方まであらわれ, しかもそれはI型に比較して激甚である。(2) 力枝以下の全枝条本数の比較では, BD, BB(W)型林分間に有意差はなく, BD, BB型林分間では明らかに差が生じ BD型林分に多い。また被害枝本数では, BD, BB型林分間では有意差はなく, BD, BB(W)型林分間ではBB(W)型林分に多いという結果が生じ, 枝条本数ならびに被害枝本数と地位の良否との間に明白な差はあらわれていない。(3)樹幹内の"とびくされ"と密接な関係にある枯枝と切断枝本数の和ではBD, BB(W)型BD, BB型林分間で有意差はないが, これらのうち被害枝はBD型林分において少ない。(4) 各幼虫態別加害数はBB(W), BB型林分ではBD型林分に比較して極めて多く, また被害枝1本当りの加害数もBB(W), BB型林分で多い。(5) 被害の認められた枯枝, 切断枝の太さの胸高直径に対する比は各林分間で頻度分布が違い, またそれらの長さと被害との関係においては60cm以下のものはBB(W), BB型林分に多くBD型林分との間に著しい差が認められており, このことは生長不良林分では切断枝に被害の多いことを示す。(6) BB(W), BB型林分のスギは成立環境に恵まれず, 林木の生長不良, 樹冠層も疎で切断枝が多い。この林木の性状がスギノアカネトラカミキリの加害を誘発するものと思われる。
- 1963-12-25
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