ブナ林の皆伐および針葉樹の造林が行われた多雪山地における表層崩壊の発生過程
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概要
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多雪山地においてブナ林の皆伐後,スギ・カラマツの成林を図る過程で発生・拡大した表層崩壊地の推移を空中写真によって調査した。崩壊地の箇所数・面積・分布範囲の増加・拡大は,発生以来10年以上の期間にわたって継続していた。ただし,その期間中に崩壊発生の誘因となるような豪雨や豪雪は認められなかった。また,調査期間を通じて100 m^2未満の小規模な崩壊跡地が多数を占めた。崩壊面積は造林からの経過年数にしたがって増加し,造林が行われなかった地域では,崩壊面積は非常に低い値で推移していた。これらの結果から,本調査地域の表層崩壊は,以下のような過程で発生に至ったものと考えられた。(1)ブナ林伐採から数年の間は伐根によって積雪の滑動は抑制され,その根系によって崩壊抑止効果が発揮された。(2)伐根数の減少にともない積雪の滑動性が増大し,根系による崩壊抑止効果も低下した。(3)造林にともなう地拵えにより積雪の滑動が抑制され,下刈りによって地表と積雪底面の間における摩擦抵抗が増大した。(4)一方,植栽木の成長は不良で,植栽後数年の間は積雪の滑動を抑制したり,崩壊抑止効果を発揮するには至らなかった。(5)造林から数年後には,腐朽によって地拵えの粗末による積雪の渦動抑制機能が失われた。(6)連年繰り返された積雪の移動にともない,表層土内にせん断を生じ表層崩壊の発生に至った。
- 1996-11-16
著者
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長谷川 幹夫
富山県林業試験場
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長谷川 幹雄
独立行政法人 通信総合研究所 横須賀無線通信研究センター
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嘉戸 昭夫
富山県林業技術センター林業試験場
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嘉戸 昭夫
富山県林技セ 林試
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相浦 英春
富山県林業技術センター・林業試験場
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嘉戸 昭夫
富山県林業技術センター・林業試験場
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