ヒノキ人工林の間伐にともなうモミジイチゴ個体群の形成と構造
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概要
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茨城県筑波山の85年生ヒノキ人工林において, 間伐にともない発達したモミジイチゴ個体群について, その形成過程と構造を11年間にわたって調査した。間伐により林床の光環境は, 相対照度で4%から27%に改善され, モミジイチゴ個体群が発達した。その後, 上方林冠の閉鎖にともない衰退した。間伐により林床植生の地上部現存量は著しく増加し, 5年後には乾重で380kg/m^2となり, 最大値を示した。その中で, モミジイチゴの占める割合は90%であった。モミジイチゴ個体群は, 埋土種子集団により形成され, 間伐後2年のうちに, 600個体/64m^2以上の実生個体が発生した。その中で生き残った実生は成長し, 発芽2年後には地下分枝による新たな根茎生産を始めた。その結果, 個体群を構成する根茎数は, 最大で700個/64m^2となった。しかし, 根茎数は, その後の自己間引きと, 遷移の進行にともなう個体群の衰退により漸減していった。個体群の空間分布において, モミジイチゴの根茎は集中斑を形成し, それら集中斑はランダムに分布していた。本調査地の間伐にともなうモミジイチゴ個体群の発達は, 大規模な永久種子バンクの存在と地下分枝による迅速なクローンとしての成長, そしてモミジイチゴの耐陰性と密接に関係している。
- 日本森林学会の論文
- 1992-05-01
著者
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