暖候性の古生層山地流域における降雨・降雪と流出(I) : 無雪期の流出特性

概要

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滋賀県西部の安曇川支流に流入する梁ケ谷の本流流域(70.0ha)とその内部流域(4.06ha)で、積雪期・無雪期を通して水文観測が実施された。流域地質は中・古生層の頁岩・粘板岩、植生はナラ類、ブナの落葉広葉樹二次林であるが、内部流域だけは伐採後約10年経過の萌芽更新地である。両流域の流出特性を抽出するモデルとし「水循環モデルjが適用され、1979年から1983年まで5年間の毎年4〜11月の無雪期間における時間・日間隔の降雨・流出記録が用いられた。モデル適用の結果、本流流域に比べて内部流域では小降雨の場合を除けば直接流出成分が多いが、直接流出や基底流出に関する運動そのものは、すべて本流流域と同一の定数値で記述された。また、本流流域の流出特性をアカマツとヒノキで覆われた花崗岩流域(桐生流域)と比較すると、直接流出量が本流流域で少なく、基底流出の運動が速いことがわかった。これらの結果を総合して、樹種と樹齢はおもに直接流出の量と運動に、地質は基底流出の運動に関係すると考えれば、花崗岩と中・古生層地域の裸地から異なった成育状態の林地にわたるハイドログラフ変動の説明がつく。
1989-05-01