暗号技術を位置づける社会的枠組みについての考察(<特集>21世紀のコンピュータセキュリティ技術)
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概要
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1990年代の暗号技術規制論は, キーエスクローシステムを中心とする枠組みで論じられた.だが当時の議論はもはや有効ではない.今後の暗号技術の進路策定について議論する際には, 1990年代の議論とは異なる枠組みが必要である.現在, 議論のための枠組みの形成が急がれている新たな暗号技術問題として, 暗号解析をめぐる係争があげられる.暗号技術の開発評価において暗号解析は重要な役割を担ってきたが, 暗号解析の公表やその再配布については議論が分かれている.日本では, 1999年から著作権の「技術的保護手段」の回避を行うプログラムを公表しようとする者は処罰されることになった.本論文では, この法制による暗号解析への影響を, 2000年にアメリカで起こったDVDプロテクト破り訴訟を参考にしながら検証する.コピープロテクトに対する暗号解析の公表を法的に規制することは, コンピュータ専門家がかかえる技術的および法的リスクを増大させる.また, その影響はコピープロテクト技術のみにとどまらず, 暗号技術の開発評価全般に及ぶ可能性がある.このような問題に対処するためには, 暗号解析を含む暗号技術開発の進路策定を決める枠組みを刷新することが必要である.最後に, 今後の専門家に要求される新たな役割についても検討を行う.
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 2001-08-15
著者
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