地域間所得再分配と公共投資 : 国庫・都道府県支出金,地方債を中心に
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概要
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本稿は地方交付税を分析した梶田(1999)に続き,縁辺地城に対する財政トランスファーの実態解明を目的として,公共投資との関係から国庫・都道府県支出金の配分および地方債の発行量に関する数量的把握を試みたものである.本稿で得られた知見は以下の3点に要約される.(1) 1960年から1993年までの間を通じて,人口あたりの基準財政需要額よりも普通建設事業費の方が小人口町村において特化している.その理由の1つとして人口3,000人未満の町村において経常収支比率が相対的に低い点があげられる.(2) 町村間の経常収支比率の値のばらつきは1970年以降,次第に縮小していく.主な原因は1970年代の積極的な公共投資政策の中で財政余力のある町村ほど多額の公共投資を行ったことにある.その結果,これらの町村では地方債の増発によって,財政が急速に硬直化している.(3) 普通建設事業費における国庫・都道府県支出金と地方債の充当比率において,過疎指定の有無による有為な差異が認められたのは小人口町村だけである.このことの主な原因として2点が指摘できる.第1に過疎債は均等割的な形で配分されているため,財政規模が小さい小人口町村ほど過疎指定による影響が大きいことである.第2に国庫・都道府県支出金の配分に関して,過疎地域の指定に伴う特別措置よりも農業土木事業に関する土地条件の方が重要なことである.
- 経済地理学会の論文
- 2001-03-31
著者
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