853. 本邦白亜系セノマニアン階産イノセラムス-III : 北西太平洋地域によく産する 3 種
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概要
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この論文ではソ連の太平洋地区だけでなく北海道からもよく産する次の3種を記載した。(1) Inoceramus pennatulus Pergament : 大型で左右不等殻, 左殻の殻頂は突出する;殻の膨らみ中〜緩, 後翼部が広い;肋は不規則である。Pergament (1966)は左殻の好例を複数図示したが, 右殻の例が乏しかった。北海道の資料はこれを補足する。幾春別とオビラシベではセノマニアン上部に特徴的だが, 大夕張や佐久では中部のやや下の方からも産している。(2) I. reduncus Pergament : 中〜やや大型で左右不等殻;左殻は膨らみが著しく, 殻頂部は突出し内前方に強く屈曲する。成長の途中で膨らみの変化があり, くびれを伴う。成長初期の殻表面には細線・細輪が目立ち, 肋は中年以降にやや強いのがあるが, 概して不規則である。典型例はセノマニアン上部に産し, 多分本種といえるものは中部にもある。(3) I. ginterensis Pergament : 典型的なものは中型で, 弱不等殻, 膨らみが緩慢で左殻頂も余り突出していない。輪郭は準卵形〜準長方形である。同心肋は通例初期に弱く, 長期以降は中程度の強さかやや不規則;細線・細輪は幼年期によく示され, 中期以降でも保存がよければ認められる。典型的なものがソ連太平洋区と北海道だけでなく, 北米内陸地区にも普通に分布している。北海道ではセノマニアン上部に多く, 中部にも産する。そして中部と上部のとの間で形質上の差は特に認められない。本種の先祖はI. takahashii Mataumoto et Noda又はそれに近いものではなかろうか;またI. heinzi Sornayは本種に近縁らしい。以上3種の層序的産出範囲はかなり長い。同様のことはソ連の太平洋側地域でも認められている。従来I. pennatulus帯を北海道ではセノマニアン上部に, ソ連太平洋区では中部に設けているが, 必ずしも適切でない。
- 日本古生物学会の論文
- 1988-04-30
著者
-
松本 達郎
C
-
浅井 明人
o Department of Geology, Kyushu University 33
-
平野 弘道
Division of Geology, Department of Mineral Industry, School of Science & Engineering, Waseda Univers
-
野田 雅之
Institute of Earth Science, School of Education, Waseda University
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