865. 本邦白亜系セノマニアン階産イノセラムス IV : 興味のある北海道産 1 新種
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概要
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地質調査所地質標本室に保管の標本で, かって田中が幾春別の三笠層中部(セノマニアン上部)から得たGSJ. F8275を松本が見て, かねてからの疑問を解く鍵となると直観し, 同じく幾春別産の東北大標本, 大夕張滝の沢のIIm相当部層(セノマニアン最上部)産の多数の九大標本と併せて共同研究した。その結果これらは田中が予見したように, "Inoceramus etheridgei Woods" (後にI. scalprum Bohmと改名, 最近はI. virgatus Schloterの亜種または1変異型とされる)と類似するが, 同心細輪(lirae)に加えて, 中程度の強さの規則正しい主肋が発達する。従ってI. atlanticus (Heinz)に類似するが, 殻の成長軸が常に前方に凹の曲線を描き, それに伴って殻の輪郭もI. atlanticusと異なる。よって上記GSJ標本をホロタイプ, その他をパラタイプスとして, 新種I. nodaiを設立し, 図示・記載した。なおI. reachensis Etheridge, 1881のレクトタイプはWoods (1911, pl.48, fig. 5; pl. 49, fig. 1)が図示した"I. reachensis"とは区別できる(英国で原標本を松本が検討)から, 後者に基づきHeinz (1936)が提唱したI. atlanticusは採用してよい。I. virgatusはセノマニアン下半部(最下部除外)に産する。今回扱ったI. nodaiの標本は同階上部に産するが, 最上部では小柄である。その小柄のものでも, チューロニアン上部産のI. tenuistriatus Nagao et Matsumotoとの差異は明確である。(本研究と平行して後者を野田が研究し1988年本号に記載。)ところが海外で複数の著者がセノマニアン産の"I. tenuistriatus"を報告している。実物を見ていないから断言は控えるが, 図示・記述のもの(同階上部, 時に中部産)に関しては, その同定は誤で, I. nodaiとした方がよいと思われる。この判断が正しいとすると, I. nodaiはセノマニアン上半部の示準化石種として重要となるであろう。
- 日本古生物学会の論文
- 1988-10-31
著者
-
松本 達郎
Kyushu University
-
松本 達郎
C
-
松本 達郎
九州大学
-
松本 達郎
Seinan-gakuin University
-
松本 達郎
九州大学理学部地球惑星科学教室
-
田中 啓策
O Department Of Geology Kyushu University 33
-
松本 達郎
Department Of Geology Kyushu University
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