739. 後期白亜紀異常巻アンモナイト類の初期殻形態
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概要
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北海道の上部白亜系産のNostoceratidae, Diplomoceratidae両科に属する異常巻アンモナイト5属8種の成長初期の殻形態を記載し, その古生物学上の意義を考察した。諸形質のうち, 縫合線と連室細管の位置は初期段階でも安定し, どの種も前者は式ELUIで, 後者は外殻側に存在する。またDiplomoceratidae科のScalarites 3種(うち1種はS. ? sp.)は成長初期に強いprorsiradiateなくびれを伴った直線状の殻を有する点で, 幼期に同様なくびれのないNostoceratidae科の類とは区別できる。この特徴的な初期殻はDiplomoceratidae科の他の類にも存在する(WRIGHT and MATSUMOTO, 1954)ことから, 同科の属性の1つとみなせる。他の形質のうちでは, 特に螺環の巻き方が変異に富み, 同一種の個体発生中でも複雑に変化する。その変異幅は巻貝類のそれに比較でき, RAUP (1966)のパラメータを用いることにより(1)平巻型(2)旋回型(3)旋回軸変換型の3群に区分できる。しかし記載種と似た巻きを示す類は別の系統の類にも存在する。Eubostrychoceras japonicumとNeocrioceras spinigerumに同定した個体では, ごく初期に胚殻と約1巻の螺環からなる正常巻のアンモニテラが識別された。アンモニテラは明瞭なくびれ(nepionic constriction)を境に異常巻の螺環に続く。他の種においても, 観察結果から同様のアンモニテラの存在が示唆される。なお表面装飾は異常巻段階に入って出現する。以上の事実や他の正常巻・異常巻類にも類似の内部構造を持つアンモニテラが認められていることから考えると, アンモニテラは卵中で形成された可能性が高い。おそらく異常巻類の孵化直後の"正常型"幼体は一時的な浮遊生活を営み, 以後底生型の生活に適応していったと想像される。
- 日本古生物学会の論文
- 1981-12-30
著者
-
小畠 郁生
Deparmtent Of Geology National Science Museum Tokyo
-
二上 政夫
川村学園女子大学教育学部社会教育学科
-
棚部 一成
Department of Earth-Sciences, Ehime University
-
二上 政夫
Fuchu-nishi High School
-
棚部 一成
Department of Earth and Planetary Science, University of Tokyo
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