河口産のカニ類の種類と分布について
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概要
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1.東京都,神奈川県下の12本の川について1952年夏期に,それらの川口に棲息するカニ類4科20属30種について分布を中心にその生態の観察を行った結果である。2.急流型の早川,酒匂川,相模川等では僅かにイワガニ科のみで,緩流型の荒川,多摩川,鶴見川等では上述の各種類が棲息する傾向にある。3.イワガニ科ベンケイガニ亜科は,鹹水の影響のない上流迄溯河し,川岸を離れて内陸の小川,溝渠を伝い,附近の丘陵地に浸入しているのがみられる。モクズガニ亜科はベンケイガニ亜科よりも更に上流の淡水域への浸入がみられるが,水辺を離れて丘陵地に浸入し,陸上に穴居生活をする様なことはみられない。他の科のものは半鹹水帯に限られ,アリアケモドキとチゴガニは潮の混入する限界を示している。この種のものでは,川岸を離れて内陸の小川溝渠に浸入するに至っていない。4.イワガニ科のベンケイガニ亜科とモクズガニ亜科は,陸上乃至純淡水の生活に移行を示しながら、幼生の発育に海を必要とするため,内陸深く迄分布するに至らず,海辺,川口等を中心に繁殖期に容易に移動出来得る範囲を出ていない。5.すべての種類は,メガロパ又は幼ガニの時代に何れの川にも等しく湖河する様に思はれるが,急流型の川では川口の条件がイワガニ科以外の種類にその生存を許さないのであろう。6.近年川の沿岸に発展した市街地,工場などより,ほとんど未処理のまま排出される排水と汚水による川水の汚染のため,最近まで夥しく棲息していたカニ数種では全く全滅又はこれに近い状態にある。
- 1965-09-20
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