日下部表とJIS漢字
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概要
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「日下部表」と称する資料は,JIS漢字第1次規格(JIS C 6226-1978)の原典の一つである「標準コード用漢字表(試案)」(情報処理学会漢字コード委員会,1971年)の土台となった漢字表であり,日下部重太郎の著した『現代国語思潮続編』(中文館書店,1933年)に附録「現代日本の実用漢字と別体漢字との調査及び「常用漢字」の価値の研究」として掲げられている。この研究では,(1)JIS漢字の字種の選定に果たした日下部表の位置,(2)日下部表の「別体漢字」とJIS漢字における異体字の扱いとの関係,(3)日下部表に反映した現代日本語の漢字の使用実態,の3点について日下部表の内容を検証し,次の結論を得た。(1)日下部表掲載の漢字6473字のうち,JIS X 0208:1997で符号化可能なのは約90%,JIS X 0213:2000で符号化可能なのは約97%である。(2)日下部表の「別体漢字」796字のうち,JIS X 0208:1997で符号化可能なのは約68%,JIS X 0213:2000で符号化可能なのは約84%である。日下部表の「別体漢字」の枠組みと,JIS X 0208:1997及びJIS X 0213:2000のそれはおおむね合致している。枠組みの精度は同程度である。(3)JIS X 0208:1997に不採録の漢字667字のうち,461字がJIS X 0213:2000に採録されており,これらは現在でも使用の実績が確認できるものである。また,研究・調査のために文字を符号化し電子化テキストとする際に問題となるのは・JISの包摂規準の適用方法である。特に問題となるのは,「互換規準」に該当する29組の漢字,人名許容字体別表・常用漢字康煕別掲字の漢字104字,及び包摂規準の変更・追加に該当する漢字であり,これらに留意し,適用した包摂規準を明示すれば操作可能なかたちで情報交換が可能である。
- 日本語学会の論文
- 2001-03-31
著者
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