モルモットにおける成熟期胸腺摘出後長期間放置の実験的アレルギー性甲状腺炎抑制効果
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概要
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モルモットの実験的アレルギー性甲状腺炎(EAT)の成立機序における胸腺の役割については, 現在まだ報告がない.本研究は, 胸腺摘出(TX)が新生仔期に行われた場合でも遅延型過敏症の誘導阻止が達成されないモルモットを用い, かつ, マウス・ラットでさえも免疫機能の低下を招来させがたいとされる成熟期TXによって, EATのpathogenesisにおける胸腺の関与の有無を明らかにすることを目的とする.かかる不利な実験条件下で, もし甲状腺炎の発生がsuppressされたとすれば, 本症のthymic dependencyの直接的な証明になると考えられる.生後10-20週令のHartley系雌性モルモットにTXまたはsham-TXを行い, 術後7カ月以上経過した動物を, 同種甲状腺抽出物-CFA混合乳剤の1回足蹠注射で感作し, 4, 5週で屠殺し, (1)甲状腺病変の組織学的検索, (2)皮膚反応, (3)MIF assay, (4)関節血球凝集反応を行った.1.成熟期TX群の甲状腺病変は, 全21例中18例において軽度以下であり.一方, sham-TX群では, これとは対蹠的に, 病変の中等度ないし高度の例が全9例中8例にもみとめられた.TX群では小葉間・小葉内間質性炎の発生が著明に抑制されており, 病変は主に濾胞間間質の毛細血管周性の小巣状巣核性細胞浸潤にとどまり, 'Invasive acinar change'の欠如傾向が目立った.2.甲状腺抗原に対する遅延型皮膚反応性は, TX群では減弱傾向を示した.3.リンパ節細胞の抗原添加培養上清のMIF活性は, TX後7-8カ月経過群では軽度の減弱傾向が, 11-13カ月経過群では著明な減弱(その一部の動物ではenhancement)がみられた.4.関節血球凝集反応による血中抗甲状腺抗体は, sham-TX群では全例抗体価が陽性であったが, TX群では約1/4の動物に陰性であった.しかし, 抗体価出現のみられた残りの動物の平均抗体価は, sham-TX群との間に有意差をみとめなかった.新生仔期TXはwastingやリンパ組織の全般的な低形成を招来するが, 本実験系ではTX後の発育に異常はなく, その免疫学的欠陥は, ひとえに成熟期TX後長期間の経過に伴う細胞の減少と, T_2胸腺不在によるT細胞補充の障害に基因するものと推察される.したがって本研究の結果は, EATのpathogenesisにおけるthymus-dependencyを支持する有力な知見と考えられる.
- 日本アレルギー学会の論文
- 1975-06-30
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