妊婦ならびに新生児大便中のCampylobacterおよびSalmonella菌

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院内濃厚感染源ともなりうる大便中の病原菌、ことにそのvirulenceの強いCampylobacterおよびSalmonellaの両菌について、昭和55年より59年までの過去5カ年の間に本院にて出産せる妊婦ならびに新生児おのおの5,427例を対象に検索し以下の成績がえられた。妊婦では妊娠30週および36週前後の2回の検査でCampylobacter jejuni 116例(2.14%)、Salmonella99例(1.82%)の保菌者が検出された。これら保菌者に対して抗生剤投与による除菌治療を積極的に行った結果、入院時の保菌者はCampylobacter jejuni 8例、Salmonella15例であつた。一方新生児では生後3日目の大便検査でCampylobacter jejuni 3例(0.06%)、Salmonella 2例の保菌者が検出された。Salmonellaの2例は保菌者の母親から出産せる児で、菌型が母児同型であつたことから垂直感染と考えられ、感染率は15例中2例(13.33%)であつた。Campylobacter感染児においては、産褥期における母親の検便結果はいずれも陰性であったことから、その感染経路が問題となる。詳細な点に関しては不明であるが、入院時他に保菌者が母児共に認められなかったこと、さらに本検査は大便のごく一部を検査に供していることなどを考慮した場合、感染児の母親は恐らくfalsenegativeに核当せるものと想定された。したがって感染児の母親を保菌者とすると入院時母親保菌者は11例で、このうち3例の児にCampylobacter jejuniが検出され、推定感染率は27.27%とも考えられた。今回の調査より両菌の保菌者は明らかに増加の傾向を示し、保菌者の母から児への感染率も高いことから、今後産科領域においては、これら両菌による感染防止対策などの配慮がより必要と考えられた。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1986-04-01

妊婦ならびに新生児大便中のCampylobacterおよびSalmonella菌

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