妊娠中毒症の凝血学的変化 : とくに分娩時出血量との関連について
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概要
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妊娠中毒症は近年凝血学的には, chronic DICの状態を呈することが多く, その重症群ほどchronic DICの程度が強いといわれている.著者らは分娩時出血の対策の一つとして, 妊娠中毒症の分娩時出血量とchronic DICの関係を検索した.妊娠中から分娩時において妊娠中毒症以外に合併症のみられなかつた純粋型後期妊娠中毒症25例を対象に, 妊娠36〜40週の間に採血し, 分娩時出血量とその凝血学的変化の関連を検索した. 分娩時出血量は500ml以下(A群), 501〜999ml(B群)および1, 000ml以上(C群)の3群に分類した.対照は健康成熟非妊婦46例, 正常妊娠後期27例である.出血時間および凝固時間ぽ出血量の多い群ほど延長がみられた.血小板敷(x10^4/mm^3)は妊娠中毒症22.0±4.77, A群26.8±6.26, B群20.3±5.75, C群17.0±6.24であつたフィブリノゲン量(mg/dl)は妊娠中毒症348.3±66.3, A群345.4±39.1, B群347.2±45.7, C群276.7±40.1であつた血清および尿中FDP(μg/dl)は妊娠中毒症ではおのおの18.5±13.4, 0.63±0.73と増加がみられ, 出血量の差による変化は認められなかつた赤血球沈降速度(mm/1hr)は妊娠中毒症43.3±14.4で正常妊娠と差は脅められないが, 出血量の差で比較するとA群46.4±4.8, B群40.6±4.6, C群31.0±3.0と変化がみられた.血漿簾XIII因子は妊娠中毒症では9.45±1.85μM-MDH/10minと正常妊娠に比して減少し, SubmitA, Sも同様であり, 出血量の多い群ばと減少が著明であつた.プロトロンビン時間および活性部分トロンボブラスチン時間は出血量の多い群ほど延長がみられた.血小板ADP凝集能(%)は妊娠中毒症82.2±7.9と光進し, A群87.9±6.91, B群81.6±7.42, C群69.8土4.89であり, 血小板拡張能(μ)は妊娠中毒症9.76±0.16と光進し, A群9.83土0.13, B群9.77±0.16, C群9.68土0.23としだいに低下がみられた.以上の結果より, 妊娠中毒症において, 分娩時出血量の多い群ほど, chronic DICの傾向が強く示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1981-04-01
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