流産絨毛組織および流産患者血中の免疫グロブリンを中心とした液性免疫学的研究
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概要
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妊娠という一種の同種移植現象の破綻と考えられる流産現象に, 免疫学的機序が関与しているか否か液性免疫の立場から検討した.流産46例の絨毛組織における各種免疫グロブリン及び補体第3成分であるβ_1C/β_1Aグロブリンの局在を蛍光抗体法を用いて検索し, 同時に血清中の免疫グロブリン(IgG, IgM, β_1C/β_1A)の定量及び血清中の補体価を測定した.対照として, 正常妊娠初期絨毛26例をとり以下の成績を得た. 1.蛍光抗体法直接法で, 正常妊娠初期絨毛では, 合胞細胞表層に, 穎粒状にIgGの局在を認め, Langhans細胞質やTrophoblastのBasement Membrane(以下T.B.M.)にIgGの局在を認めるものもあつた.しかし, 流産絨毛では合胞細胞表層ないし細胞質にIgMの局在を認めるものが多く, 合胞細胞やLanghans細胞質及びT.B.M.に局在するIgGは減弱ないし, その局在を認めないものが多かつた.またβ_1C/β_1Aは, Trophoblastの変性に陥つた部位に強い蛍光を認めることが多く, 流産絨毛では合胞細胞やLanghans細胞の細胞質に強い蛍光を認めたが, 正常妊娠初期絨毛では, Langhans細胞質やT.B.M.にβ_1C/β_1Aの局在を認めたが, 合胞細胞に局在を認めたものはなかつた. 2.流産例のうち, 測定出来た16症例のCH50値41.2±5.4(N=16)は, 同時期正常妊娠26例51.8±8.5(N=26)に比し, 有意に低値を示した(p<0.01).また, 補体第3成分とされるβ_1C/β_1A量も, 流産患者血清53.0±8.4mg/dl(N=22)と, 同時期正常妊娠血清の60.5±14.8(N=30)より有意な低値を示した(p<0.05). 3.流産患者血中IgG, IgMは, 同時期正常妊婦と有意な差を認めなかつた.以上, 流産絨毛におけるIgGは減弱ないし消失し, 逆にIgMの局在を認めるものが多く, また流産患者血清中の補体価CH50値, β_1C/β_1A量が同時期正常妊娠血清に比し, 有意に低下していたことは, 流産患者における補体の消費と考えることもできる.このようた事実から, 流産例ではその絨毛組織に対して, 母体からの体液性免疫反応が惹起されている可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1981-12-01
著者
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