ヒト絨毛癌細胞のMTX耐性機構に関する研究

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絨毛癌は、すべてのタイプの妊娠に続発するが、脈管侵襲が著明であるため血行性転移を伴いやすい。このため、治療の主体はMTXを中心とする化学療法であり癌細胞の薬剤耐性能獲得は、絨毛癌患者の予後を大きく左右する。今回、2種類のヒト絨毛癌細胞株(HCCM株およびCC1株)より、MTX耐性株を誘導し、HCCM株からは10^-6M〜10^-4M MTX濃度で増殖可能な5種類、CC1株からは10^-8M〜10^-7M MTX濃度で増殖可能な2種類の耐性株を作製した。非耐性株および耐性株の、1)HCG分泌能、2)細胞内^3H-MTXの取り込み、3)細胞内DHFR活性値、4)核型分析、5)CC1系耐性株のDHFR遺伝子の増幅の有無を比較検討した。その結果、1)HCG分泌能は、耐性能が高まるにつれ低下する傾向が認められた。2)MTXの細胞内取り込みは、耐性能獲得に伴い現象する傾向が認められた。3)DHFR活性値は、HCCM系では耐性能獲得に伴い上昇し、10^-4M耐性株では親株に比し、約10倍の増大を認めたが、CC1系では差を認めなかった。4)両耐性株ともに耐性能獲得による特定の染色体変化は同定できなかったが、MTX耐性によるDHFR遺伝子の増幅で生ずるとおもわれているDMsは、全ての細胞株で観察され、その出現頻度は耐性濃度上昇につれ増大した。5)CC1 10^-7M耐性株のDHFR遺伝子量は、CC1親株およびCC1 10^-8M耐性株に比べ、約9倍に増幅していた。以上のことより、1)MTX耐性能獲得には、MTXの細胞膜運搬の低下およびDHFR活性値の増大が少なくとも関与していることが判明した。2)DHFR遺伝子コピー数の増大は、DHFR蛋白の増加に先行するらしいことが判明した。3)絨毛癌細胞で観察されたDMsは、DHFR遺伝子以外の遺伝子の増幅の結果招来されたものであることがうかがわれた。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1987-05-01

ヒト絨毛癌細胞のMTX耐性機構に関する研究

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