生体インピーダンス法による妊産婦浮腫の評価
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概要
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妊婦では生理的に体水分量が増加することが知られているが, 妊娠中毒症を合併すると体水分量は生理的変動を越えて著明に増加する. 一般に体水分量の異常な増加は下肢の浮腫として現れることより, [ケイ]骨稜を手指で圧迫して判定するが, その判定基準は各医師の主観に左右され, 正確に定量化された方法とはいい難い. そこで, 生体の体水分量が増加すると電気抵抗が減弱することを利用した, 生体インピーダンス法を応用することにより, 浮腫判定の定量化, 客観化を試みた. 方法としては正常妊婦38例について妊娠初期より後期にわたり, 毎月経時的に電気抵抗の測定を行い, 正常妊婦における妊娠中の変動を明らかにした. また, 妊娠中毒症例について, その病態の変化に伴う電気抵抗の変動を測定し比較検討を行った. 測定方法は, 患者の左右の足首に人体に無害の交流電流(800μA, 50KHz)を流し, そこで発生する電圧を測定することにより電気抵抗値を求めた. 測定機器には, エー・アンド・デイ社のAD6311を用いた. その結果, 正常妊婦では妊娠3カ月より10カ月まで緩やかであるが有意の電気抵抗の減少を認めた(p<0.01). 妊娠中毒症例においては, 発症前より抵抗値を測定していた症例では, 臨床的に浮腫の出現が認められた時期より以前に異常な電気抵抗の低下が確認され, 浮腫の進行とともに著明な低下を示した. また, すべての妊娠中毒症例において, 分娩後, 中毒症が改善され浮腫が消失していく過程で, 電気抵抗値は上昇し, 臨床的に浮腫が消失した後も暫くの間, 上昇しつづけた. 以上の結果より, 妊娠中の浮腫の評価は, 従来より[ケイ]骨稜を手指で圧迫して行ってきたが, 生体インピーダンス法を用いることにより, 生体の過剰な水分量の増加に対して, より精密で客観的な評価が可能となった. このことは, 同法を応用することにより, 今後, さらにきめの細かい妊産婦管理の方法が確立できると期待される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1996-01-01
著者
-
福庭 一人
総合太田病院
-
有沢 正義
平塚市民病院
-
持丸 文雄
平塚市民病院
-
有澤 正義
平塚市民病院
-
関 隆
平塚市民病院
-
有澤 正義
都立大塚病院
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持丸 文雄
平塚市民病院産婦人科
-
福庭 一人
平塚市民病院
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