培養ヒト子宮筋細胞における細胞内arachidonic acid, palmitic acid遊離に関する検討 : cortisol, progesteroneの作用
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概要
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近年における細胞内各種情報伝達系の研究に伴い, 細胞膜構成に携わる燐脂質は, 分解と再構成が常に行われることにより, その構造はダイナミックに変動しているものと考えられるようになった. さらに分解に伴い遊離された脂肪酸の一部は, 各種 prostaglandinなどの生理活性物質として, 引き続く情報伝達系活性化に重要な役割を担っていることも知られるようになった. 我々は以前より子宮筋情報伝達系に対するステロイドホルモンの作用を検討しており, 現在までに妊娠末期に大量に存在する cortisol (F), progesterone (P)が, oxytocinによる子宮筋収縮に対し, その調節因子として作用することを報告した. 今回我々は培養ヒト子宮筋細胞を用い, 各種濃度の F,Pの存在が子宮筋細胞内脂肪酸濃度にいかなる影響を及ぼすかを高速液体クロマトグラフィーを用いて検討した. 10^<-7>〜10^<-5>Mの F24時間負荷後における細胞内 arachidonic acid, palmitic acid濃度 (非刺激群), ならびに30秒間の oxytocin刺激後における各脂肪酸濃度を測定した結果, FCS存在下非刺激群における palmitic acid濃度は, 10^<-7>M F投与群において減少することが確認された. 一方FCS非存在下では, arachidonic acid, palmitic acidいずれも高濃度F負荷により著明な増加傾向が確認された. また oxytocin添加による細胞内脂肪酸濃度を検討した結果, arachidonic acid濃度は Fによる変動を認めず, palmitic acid濃度は, 10^<-6>M F添加群において軽度減少することが確認された. 同様に Pに関し検討した結果, FCS存在下非刺激群においてはP 10^<-5>M添加群において palmitic acidの軽度減少を認めたのに対し, arachidonic acidは, Pによる変動を認めなかった. また, FCS非存在下では両脂肪酸とも有意な増加が確認された. 一方, oxytocin添加群においては, arachidonic acid で P濃度依存性の著明な減少がまた, palmitic acidで有意な減少が確認された. 以上の成績は, 妊娠末期に生体内に大量に産生されるF, Pが, 細胞内脂肪酸濃度の調節因子として作用していることを明らかにしたものである.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1995-06-01
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