卵巣がんスクリーニングにおける腫瘍マーカーの有用性と問題点(婦人科がんスクリーニングの有用性と問題点)
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概要
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【目的】卵巣がん検診の手段としての腫瘍マーカーの一次ならびに二次(良悪性鑑別)検診における有用性と限界ならびに問題点を明らかにする.【方法】1.卵巣がん検診のkey markerであるCA125の健常女性における年齢,月経周期による値の変化を確認する.2.無症状の一般健診婦人(n=1,384)のCA125を測定,その陽性率および陽性例の詳細を明らかにする.3.卵巣がん一次検診のpilot study(n=5,295)としてCAMPAS(Computer aided multivariate and pattern analysis system)を応用し,その陽性率ならびに付属器腫瘤の有無との関連を明らかにする.4.付属器腫瘤を認める症例におけるCA125ならびにCAMPAS (n=2,876)の良悪性鑑別における有用性と限界を明らかにする. 5.CAMPASにCA546,GATを追加して良悪性鑑別における正診率の向上を検証する.【成績】1.CA125(n=482)の年齢別平均値(U/m1)は50歳以上と未満で有意差を認め,平均値+2SD(U/ml)は44歳以下44.0,45〜54歳32.4,55歳以上15.4であった.月経周期別平均値(n=202)では月経期に51.2U/mlと有意に高値を示した.2.一般健診者1,384人(平均年齢49.8歳)のCA125の平均値は11.7U/ml,陽性率(カットオフ値35U/ml)は2.9%(40人),その平均値は93.3U/mlであった.陽性者のうち月経中採血が18人(45%)あり,その平均値は116.7U/mlであった.40人のうち子宮内膜症が7例,良性卵巣腫瘍が3例存在したが卵巣がんは発見されなかった.3.5,295例におけるCAMPAS(+)は0.68%(36例)であった.経膣超音波による付属器腫瘤陽性は140例(2.6%)で,このうちCAMPAS(+)は8例.CA125陽性は15例のみであった.7例に手術が施行され,漿液性腺癌Ia期1例が発見された.卵巣がん発見率は全体の0.019%,CA125陽性例の0.98%,CAMPAS(+)例の2.8%であった. 4.2,876例中680例に手術を施行し,悪性卵巣腫瘍92例,境界悪性腫瘍18例,良性付属器腫瘤570例の結果であった.CAMPASならびにCA125のsensitivityは95.7%(Ia期81.0%,Ic期100%),87.0%(Ia期57.1%,Ic期80.0%),specificityは90.2%,60.5%,accuracyは90.9%,64.2%であった.CA125平均値はIa期がん,内膜症性嚢胞,境界悪性腫瘍で有意差は認めなかった. 5.CAMPASにCA546を加えることにより卵巣がんIa期(n=14)および境界悪性腫瘍(n=9)のsensitivityがそれぞれ71.4%から92.9%および33.3%から55.6%に上昇し,GATを加えることにより内膜症性嚢胞および成熟奇形腫のspecificityがそれぞれ81.0%から95.2%および75.0%から87.5%に上昇した.【結論】1.CA125を単独で検診に利用する場合,年齢に応じたカットオフ値を設定すべきであり,月経中の採血は避けるべきである.また内膜症性嚢胞,成熟奇形腫での偽陽性が非常に高いことが問題となる.2.一次検診におけるCAMPASの陽性率は0.68%であり,その約3%に卵巣がんが発見されると推定され,一次検診としては高危険群を効果的に絞り込める.しかしI期のがんの20%を見逃す危険性があり,現実的には見逃しが問題となるため更なる改良が必要である.3.CAMPASとCA546,GATのcombined assayにて,腫瘍マーカーによる二次検診のsensitivity,specificityを改善することができる.以上より腫瘍マーカーのみを卵巣がん一次検診に用いることは見逃しの危険性が高く,現時点では実用的ではない.しかし,良悪性鑑別を目的にCAMPASなどの統計学的手法を取り入れたシステムを二次検診に応用する意義はあると思われた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 2003-08-01
著者
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