野生種 Allium galanthum Kar. et Kir. の細胞質はネギ (A. fistulosum L.) の雄性不稔系統の開発に有効である
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概要
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ネギ属Cepa節野生種Allium galanthum Kar. et Kir.の細胞質を利用したネギ(A. fistulosum L.)の雄性不稔系統を育成するため, A.galanthumを細胞質提供親とした連続戻交雑により, ネギの細胞質置換を行った.連続戻交雑の過程において, B_1以降は種子稔性が高い方向に, さらに, B_2以降は花粉稔性が低い方向と高い方向に選抜を行い, 作出したF_1, B_1, B_2, B_3, B_4およびB_5について, 花粉稔性および種子稔性の調査を行った.花粉稔性は, F_1では65%であった.B_1では10から77%, B_2では0から98%の範囲でそれぞれ分離した.花粉稔性が低い方向に選抜を行ったB_3, B_4およびB_5のほとんどの個体が, 花粉不稔性を示した.F_1での稔性の低下は核の雑種性によると考えられたが, 戻交雑が進んだ世代において出現した花粉不稔は, 核ゲノムの雑種性によるものではなく, A.galanthumの細胞質とネギの核との不和合によって引き起こされると考えられた.花粉稔性が高い方向に選抜を行ったB_3, B_4およびB_5のいずれでも花粉可稔個体と花粉不稔個体とが約1 : 1の比で分離した.このことから, 花粉可稔個体はA.galanthumの核ゲノムに由来する単一の優性稔性回復遺伝子を有していることが強く示唆された.葉緑体およびミトコンドリアDNAの分析結果から, 戻交雑後代がA.galanthumの細胞質を受け継いでいることが証明された.本研究の結果から, A.galanthumの細胞質はネギの雄性不稔系統の開発に有効であることが明らかとなった.
- 園芸学会の論文
- 1999-07-15
著者
-
山下 謙一郎
農研機構野菜茶研
-
田代 洋丞
佐賀大農学部
-
山下 謙一郎
佐賀大学農学部
-
田代 洋丞
佐賀大学農学部
-
有田 寛貴
福花園種苗株式会社
-
有田 寛貴
佐賀大学農学部
-
田代 洋丞
佐賀大学農学部蔬菜・花卉園芸学教室
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