RFLPマーカーを用いた水稲中間母本農6号におけるツマグロヨコバイ耐虫性の遺伝子分析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
インド型品種Lepe-dumaiよりツマグロヨコバイ耐虫性を導入した日本型の水稲中間母本農6号(以後,中母農6号と略)の耐虫性遺伝子を同定するため,125個のRFLPママーカーを用いた中母農6号のグラフィカルジェノタイプを明らかにした。その結果,第3染色体で5個,第11染色体で2個の近接するRFLPマーカーがLepe-dumai型のRFLPパタ-ンを示し,このRFLPマーカーの座乗する染色体領域にLepe-dumai由来の染色体が導入されていることが明らかになった。また感受性の日本型品種トヨニシキと中母農6号とのF_1にトヨニシキを戻し交配して得たB_1F_1,76個体において,RFLPマーカーと耐虫性程度との分離データに基づく計量形質遺伝子座(QTL)分析の結果から,第3と11染色体上のこの二つの領域に,作用力の大きい補足作用の耐虫性に関するQTLが存在することを明らかした。これまでの報告で,中母農6号の耐虫性は2または3個の優性の補足遺伝子により支配され,このうちの一つはGrh2であることが明らかにされている。しかし,Grh2の遺伝子座あるいはそれ以外の遺伝子にたいする遺伝子記号および遺伝子座につではいまだに明らかにされていない。今回の我々が同定した第3染色体と第11染色体の2個のQTLは,これまでの報告の優性補足遺伝子に対応するものであり,その一つはGrh2であると考えられた。また,これまで第3と11染色体上にはツマグロヨコバイの耐虫性に関する遺伝子は報告されていないことから,もう一方の遺伝子にGrh-4(t)の遺伝子記号を仮称した。今回,二つの遺伝子がどちらの染色体上にそれぞれ位置するのかを特定することは出来なかったが,耐虫性遺伝子それぞれに連鎖するRFLPマーカーを同定することができた。このことにより,ツマグロヨコバイ耐虫性に関する品種や系統の開発に分子マーカーを用いた選抜育種が可能となる。今後,複雑な発現機構をもつ中母農6号の詳細な耐虫性の遺伝的機構や遺伝子座の同定を進めるために,この二つのツマグロヨコバイ耐虫性遺伝子をそれぞれ一個ずつ単独で保有する同質遺伝子系統をRFLPマーカーを用いて育成する予定である。
- 日本育種学会の論文
- 1998-09-01
著者
-
田村 克徳
九州沖縄農業研究センター
-
福田 善通
北陸農業試験場
-
田村 克徳
北陸農試
-
平江 雅宏
農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター北陸研究センター
-
田村 克徳
農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター
-
大矢 慎吾
新潟県上越市
-
田村 克徳
北陸農業試験場
-
平江 雅宏
北陸農業試験場
-
大矢 慎吾
北陸農業試験場
-
田村 克徳
九州沖縄農研セ
-
Hirae M
Hokuriku Research Center National Agricultural Research Center National Agriculture And Food Researc
関連論文
- 抵抗性イネ品種を加害するツマグロヨコバイのバイオタイプの発育と産卵
- 温暖地向き極良食味水稲新品種「きぬむすめ」の育成
- ホールクロップサイレージ用水稲新品種「タチアオバ」の育成
- 99 高温耐性水稲品種「にこまる」の良好な登熟には穂揃期の茎のNSCが多いことが貢献している(環境ストレス,日本作物学会第226回講演会)
- 暖地において密播した晩播水稲の生育および収量・品質特性(栽培)
- 暖地の湛水直播栽培における晩播水稲の生育および収量・品質特性(栽培)
- 玄米品質に優れる暖地向き良食味水稲品種「にこまる」の育成について
- 水稲新品種「あきまさり」の育成
- 水田におけるツマグロヨコバイ抵抗性準同質遺伝子系統の抵抗性
- インド型稲品種南京11号より誘発された難脱粒性突然変異系統における脱粒性程度および離層形成の有無
- 分子マーカーを利用した遺伝・育種学的研究,19 異なる地域における出穂性に関するQTLの反応
- ツマグロヨコバイ抵抗性遺伝子Grh2を保有するイネ準同質遺伝子系統における抵抗性の変動
- I320 ツマグロヨコバイ抵抗性品種「関東PL10」を加害するバイオタイプ(一般講演)
- G104 ツマグロヨコバイ地域個体群の抵抗性品種加害能力(寄主選択 耐虫性)
- ツマグロヨコバイ抵抗性品種の密度抑制効果
- D210 ツマグロヨコバイ地域個体群の抵抗性品種に対する反応(寄主選択・耐虫性)
- 幼虫発育を考慮したイネのツマグロヨコバイ抵抗性検定法
- 121 土中出芽性に関するQTL (計量形質遺伝子座) 解析
- インド型と日本型イネ品種間の遠縁交雑集団における分離の歪みに関する情報を含むRFLP連鎖地図
- 栽培イネにおける穂首維管束数と一次枝梗数のQTL解析
- アジア栽培イネにおける穂首維管束系の変異と生態型分化との対応
- 栽培イネにおける穂首大維管束数と一次枝梗数の遺伝率について
- イネ矮性変異体, 短銀坊主(d35)の原因遺伝子はジベレリン生合成酵素の一つであるカウレン酸化酵素をコードしている
- 密陽 23 号/アキヒカリの RI 系統群を用いた乾燥ストレスにより生じる巻き葉に関する QTL 解析
- イネの頴花数に関するQTLのマッピング
- 42 水稲の登熟性向上に関する生理生態学的研究 : (2) 密陽23号/アキヒカリの雑種固定系統群を用いた登熟特性の評価と登熟性に関する遺伝子座解析
- インド型イネ品種南京11号より誘発された難脱粒性突然変異系統の遺伝子分析
- 食味と高温登熟条件下での玄米品質に優れる多収性水稲品種「にこまる」の育成
- F308 分子マーカーを用いたツマグロヨコバイ耐虫性遺伝子座の推定(寄主植物 選好性 耐虫性)
- F307 ツマグロヨコバイ耐虫性検定法の精度向上(寄主植物 選好性 耐虫性)
- F306 ツマグロヨコバイ耐虫性中間母本・育成系統の圃場における生息密度抑制効果(寄主植物 選好性 耐虫性)
- I301 ツマグロヨコバイ抵抗性品種のイナズマヨコバイに対する抵抗性
- C108 新しく見つかったツマグロヨコバイ抵抗性品種(一般講演)
- H116 ツマグロヨコバイのバイオタイプの諸形質の比較(寄主選択・耐虫性)
- H108 異なる抵抗性遺伝子におけるツマグロヨコバイの反応(寄主選択・耐虫性)
- イネのツマグロヨコバイ耐虫性に関する遺伝機構の解明 VII. Grh4(t)のマッピング
- イネの頴花数に関連したQTLSIYI(t)のマッピングIII
- イネの頴花数に関連したQTLのマッピングII
- 蛍光プライマー用いた改良AFLP法による日本栽培稲の遺伝的多様性の検出と日本稲品種に導入されているインディカ稲ゲノム断片の検索とクローニング
- DNA マーカーを用いたイネの密陽 23 号/アキヒカリ RI 系統群における芒長に関する QTL 解析
- 密陽 23/ アキヒカリの RI 系統群を用いたイネいもち病抵抗性に関する QTL 解析
- RFLPマーカーを用いたイネのツマグロヨコバイ耐虫性遺伝子Grh1のマッピング
- 水稲の病害虫 非選好性を利用したイネのツマグロヨコバイ抵抗性検定法の検討
- 水稲新品種「あきさやか」の育成
- 飼料用水稲新品種「ニシアオバ」の育成
- 50 日印交雑F_1稲の生育・収量特性および環境適応性について
- 80 潤土散播水稲における苗立ち密度と窒素施肥法が収量に及ぼす影響(関東支部講演会)
- E303 ツマグロヨコバイのバイオタイプを用いた耐虫性遺伝資源の探索(寄主選択・耐虫性)
- RFLPマーカーを用いた水稲中間母本農6号におけるツマグロヨコバイ耐虫性の遺伝子分析
- A216 ツマグロヨコパイのバイオタイプの遺伝様式(寄主選択)
- E309 ツマグロヨコバイ耐虫性品種を加害するバイオタイプの作出(寄主選択 耐虫性)
- インド型イネ品種南京11号から誘発された突然変異系統SR-1の離脱粒性遺伝子のRFLPマッピング
- イネの日・印交雑系統における稔性回復遺伝子の有無と日本型・印度型の関係
- P53 汚れた水のもとに野生イネは生えない
- Mapping of the Grh1 locus for Green Rice Leahopper Resistance in Rice Using RFLP Markers
- Artificial selection of biotypes of green rice leafhopper, Nephotettix cincticeps Uhler(Homoptera: Cidadellidae), and virulence to resistant rice varieties
- 早植えとフィルム被覆処理による水稲の高温寡照耐性の評価法
- ガンマ線照射による黄色胚乳突然変異を持つイネ新品種「初山吹」の育成
- 食味と高温登熟条件下での玄米品質に優れる多収性水稲品種「にこまる」の育成
- ホールクロップサイレージ用水稲新品種「タチアオバ」の育成
- 温暖地向き極良食味水稲新品種「きぬむすめ」の育成
- 飼料用水稲新品種「ニシアオバ」の育成