トマト栽培種の子葉プロトプラストからの体細胞胚形成と植物体再生
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概要
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トマトの種間交雑に存在する交雑不和合性を克服するため,体細胞融合法やプロトプラスト操作などの利用が有力視されている。その場合,種類の異なる組織や細胞のプロトプラストから植物体再生系を確立することはこれらの手法の展開に重要な基礎となる考えられる。これまで主なプロトプラスト源の一つである本葉の場合,そのドーナー植物の育成に環境条件の影響が大きく,たとえ効率の良い培養系を確立していても,必ずしも普遍的に同様な結果が得られないのが現状である。本研究は材料育成の所用時間が短く,しかもプロトプラストの収量の高い栽培種の子葉を用いて,プロトプラストからの体細胞胚形成と植物体再生を成功させたものである。トマト栽培種"強力東光"の種子を無菌播種して3-4H後の発芽したものをMS寒天(0.8%)培地で20℃,3.OOO-4.500lux,16時間日照の条件下で培養した。プロトプラスト単離前に20℃,1-2日間,幼苗の暗黒処理を行った後,苗齢8-1O日目の子葉を用いて,TM-2(Shahin 1985)液体培地の中で10℃,12時間の暗黒条件下で低温処理を行った。プロトプラストの単離と調整はChen et al.(1987,1988)の方法で行った。プロトプラストの収量は子葉1gあたり2×10^6であった。プロトプラストの培養は1×10^5個/mlの懸濁液を35mmのシャーレに1ml入れ,25℃,300-500lux,16時間日照の条件下で培養した。培養1シャーレあたりに1mlのO.15Mのショ糖を入れたTM-2液体培地をそれぞれ4,8日目に1回ずつ添加した。培養後12日の細胞分裂率とコロニー形成率はそれぞれ未添加の5倍と14倍であった。ショ糖濃度を薄めたことによって(O.2M→O.17M→O.16M),培養中の褐色化の防止だけではなく,培養効率をも向上させえることが明らかとなった(Table 1)。
- 日本育種学会の論文
- 1994-09-01
著者
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