ソバ種間交雑Fagopyrum tataricum×F.esculentumの接合体の発育停止をともなう受精の不成立
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概要
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ダッタンソバ(F.tataricum)と普通ソバ(F.esculentum)との種間雑種における胚のうの発達を光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した.雑種胚形成のための受精前後の障壁を超微細構造の特性を中心に見たものである.TEM試料として受粉後1〜5日目の胚珠を摘出し,固定した.ダッタンソバでは自家受粉を実施し,普通ソバでは適法受粉を行ったものを対照として用いた.主な異常症状としては,受粉後1日目の接合胚のうにおいて,両助細胞の同時変形発育および助細胞間の合点側細胞壁肥大が観察された.正常な細胞質の卵細胞と中央細胞が観察されたが,この場合,助細胞へ花粉管の貫入が行われない結果の受精不成立による種間不和合であると考えられた.一方,受粉後5日目の胚のうにおいて,卵,精核の融合は観察されたものの,その後,接合体細胞壁の部分崩壊,消失をともなう細胞分裂停止が見られ,また,リボソームの減少により疎に散在したその他の細胞内小器官や,各細胞内小器官の減少をともなう胚乳細胞分裂の遅延が観察された.この場合,接合体細胞は,周辺の異常な胚乳細胞からの栄養供給が行われず,結果的に接合子胚の生育に遅延をもたらしていると考えられた.これらの受精前後の諸症状を,種間雑種の障害が生じていることと関連づけて論じた.
- 日本育種学会の論文
- 2002-03-01
著者
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